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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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安倍政権は一体何を目指すのか?

2006年10月 2日  tag:

 安倍首相の所信表明演説が行われた。私の立場からは「批判のための批判」「賞賛のための賞賛」はしたくない。ただ、自らが筆をとり、側近グループがとりまとめたという割には、従来どおり、内閣の官僚が各省庁から政策部品を集め、多少のスパイスを加えホッチキスでとめたような、迫力も目玉も新味もない演説だった。

 安倍氏は、私の理解が正しいなら、思想的には自民党最右派・タカ派に属する政治家である。しかし、この演説では、一番それが面目躍如すべき安全保障面でも教育面でも、そのDNAは発露していなかった。

 たとえば、従来、政治家としての安倍氏が主張してきた「集団的自衛権の行使」「日米同盟の双務化」については、演説では単に「いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別具体的な例に即し、よく研究してまいります」だった。

 これが、あくまで集団的自衛権を解禁した上で、日本が攻撃されてもいないのに米国軍とともに自衛隊が海外で一緒に戦うといった「集団的自衛権のコアーの部分」を否定する趣旨なのか、従来の政府解釈どおり「集団的自衛権の行使はできない」という前提で、具体的ケースが「個別的自衛権の延長線上」にあるのか「集団的自衛権の範疇」なのか、そのマージナル(限界的)な部分をよく検討しようという趣旨なのか、がはっきりいってわからないのだ。少なくとも総裁選での安倍発言(注)からすると後者のように思えるのだが。

 教育でも本来、安倍氏にとっては不本意であるはずの政府・自民党の「教育基本法案の早期成立を期します」とするだけで、その中味の修正への言及もなく、具体的政策をみても、「基礎学力強化プログラムの推進」「教員免許の更新制度の導入」「外部評価の導入」等の無難なものにおさめ、国家統制的な色彩は、少なくとも形式文言的には伺えない。

 その意図が、政権の船出では、戦略的戦術的に「ツメ」を隠し、今後、徐々に局面局面で出していこうということなのか、それとも、安倍氏のもう一つの顔、「如才なく気配りもできる現実主義者」のバランス感覚で、字面どおり、政権を運営していこうということなのか。後者であるなら、政権のセールスポイントはどこに求めていくのか。

 余談だが、消費税については「逃げず、逃げ込まず」という姿勢で対応、という文言がひねりだされた。その趣旨は、消費税の増税を正面から真摯に検討することにやぶさかではないが、安易に増税に逃げ込むこともしない、という意味だろう。おそらく、来年の参院選までに、幾度となく同じ文言を聞かされることだろう。靖国参拝を明言しないという姿勢とともに、いわゆる「戦略的あいまいさ」ということなのだろうが、それがいつまで通用するのだろうか。

 ある政治家が、実際、日本のトップリーダーたる首相になってはじめて、その地位の重さを知り、国家国益の観点から宗旨替えをする(君子豹変する)ことはありうべきことで、一概に批判されることでもない。早速始まる代表質問等の国会論戦で、是非とも今後、「安倍政権の目指すもの」を見極めていかなければならないと考えている。

(注)総裁選での安倍発言
 総裁選で安倍氏がよく引き合いに出したのが、「公海上を米艦船と自衛隊の艦船が併走している時、米艦への攻撃がなされても自衛艦は反撃できないのか」という点だった。状況にもよるが、その一撃が、米艦を意図的に狙ったものなのか、たまたま米艦だったのか(自衛艦も対象だったのか)は、その時点ではわからない場合が通常であるから、それを自国への攻撃とみなして、反撃は個別的自衛権の範囲内とする解釈も成り立ちうる(要検討)とも考えられる。安倍氏も発言で「個別的自衛権と集団的自衛権のはざま」と言っていたが、それは、こうした限界事例の検討のようにも受け取れた。

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