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江田けんじ 衆議院議員 神奈川8区選出(横浜市青葉区・緑区・都筑区)

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『戦争への道は歩まない(中)』・・・8/15の誓い

2006年8月28日  tag:

 話を元に戻す。10年前と何が私の中で変わったか?元々警察官を父に持つ保守的な家庭に生まれ育った私は、どちらかと言えば「右」、いわゆる「タカ派」的な考えの持ち主だった。

 現に、湾岸戦争の時、首相官邸にいて首相演説の草稿づくりや国会対策に奔走していた私は、当時の海部内閣の自衛隊派遣に対する煮え切らない態度や世論の動向に、地団駄を踏んでくやしがったものだ。「武力行使と一体ではだめ」とか「後方支援に限る」とか、自衛隊の海外派遣の歯止めとして内閣法制局が次々と繰り出してくる法匪のような理屈をうとましくも思っていた。「集団的自衛権の行使」にも賛成だったように思う。

 それが今、「二度と戦争への道は歩まない」と声に出して誓うまでになった。論者によって定義が異なるので一概には言えないが、いわゆる本来的な意味での「集団的自衛権の行使」にも反対だし、そこに実質上踏み込んだイラク戦争への自衛隊派遣にも、それ故に国会議員として反対した。

 その背景には、確かにここ数年で、日本全体が右傾化し、また、イラク戦争や北朝鮮、テロ等の問題に直面し、現実に戦争の具体的な危険性が生じてきたという背景、事情もあるにはある。

 しかし、なぜ私がこうも変わったのかと言えば、あの橋本政権、その中枢である首相官邸において、総理秘書官として日々、日本のトップリーダーたる内閣総理大臣とともに仕事をしてきた経験からくるものと言わざるをえない。その経験則から、この国の統治機構の意思決定メカニズムの「危うさ」と世論の「未成熟さ」が、再びこの国を壊す可能性があることを身にしみて思い知らされた。

 「我が国統治機構の危うさ」。それは実際に政権中枢にいた者しかわからない。しかも、首相とその回りの一握りの人間しかわからないことがある。それをここで一々説明するのは難しいが、例えば、先般の北朝鮮のミサイル発射で言えば、ミサイルがリアルタイムで飛んできているのに、世論は比較的冷静だった。NHKが朝の連続テレビ小説を休止してミサイル関連番組を流したところ、視聴者から抗議の電話が殺到したという。典型的な「平和ボケ」だが、その背景には「首相官邸(首相や官房長官)が、外務省や防衛庁が、それなりの情報収集や安全確保策はやってくれているのだろう」という漠然とした期待感もあっただろう。

 しかし、そんな悠長な考えを到底持てない私にとっては、内心ビクビクの時間だった。それはなぜかと言うと、今の政府の危機管理レベルの本当の実態を知っているからとしか言いようがない。もちろん、そんなことは知るよしもない一般国民は、こういう危機の時には努めて平静を装うことが肝要と演技する政府の姿を見て、変に安心したりもする。

 政治家は、選挙で「外交」や「安全保障」は票にならないから、勉強している人、訓練されている人が極端に少ない。危機管理は「教科書のない世界」だから、官僚が最も不得手とする分野でもある。我が国の軍事関係の学者や評論家は、実際、軍で戦ったことも政治や行政の中枢にいたこともないから、無責任な発言を繰り返す。

 日本の危機管理は、こうした「危うさ」の上に乗って、まるで「サーカスの綱渡り」のように行われているのだ。そしてそれは、私も中心となって手がけた「官邸機能の強化」が実現した現在でも基本的に変わっていない(以下、来週の「直言」に続く)。

『戦争への道は歩まない(上)』・・・8/15の誓い
『戦争への道は歩まない(下)』・・・8/15の誓い