国会会期延長せず・・・官邸から見る政治の風景
2006年6月12日 tag:
小泉首相が、今国会の「会期延長せず」を決断、与党に一方的に指示した。本来、会期を延長するか否かは国会の権限だけに、行政府の長が早々に、かつ与党と相談もせず流れを作ってしまうのも珍しい。これも一種の「小泉流」か。
確かに、与野党から批判が出ているように、自分たち(政府)が、教育基本法の改正や共謀罪、社会保険庁改革法案のような法案を出しておきながら、自ら、その成立を不可能とするような「会期延長せず」を言うのは、一体何を考えているのかというのもわかる。だから、「小泉は安倍を総理・総裁にしたいがために、国会は早急に閉め、彼が動きやすいようにしたのだ」「いやいや、退陣を前にして、もう面倒くさいのだろう」「やる気がない」といった解説がまかりとおる。
そういう一面も確かにあるだろう。しかし、政府の中に長くいた、特に首相官邸勤務もある私のような人間に言わせれば、小泉首相の「仕事は国会だけではない。これから日米首脳会談やサミット、骨太の方針等々いくらでも仕事はある」というのは、体感温度としては非常によくわかるのだ。
その前提には、そもそも国会なぞ、いたずらに時間を浪費するだけで何も国政を前進させていないし、それに拘束されるのは時間の無駄、重要法案の行革推進法案や医療制度改革法案も通ったし、残りの法案は何も急いで今国会で成立させる必要もない、という考えがある。
議会制民主主義の原則からは、また、私も国会議員の一員だから、本当はこんなことは口が裂けても言ってはならない。が、残念ながら、これが国会の現状だからやむを得ない。政党の議員連中が、党内の会議で、ああだこうだと法案や政策の審議をしているのは良いが、以前にも述べたとおり、それは「ガス抜き」か「マスターベーション」のレベルでしかない。国会審議はもちろん重要だが、それで何か法案の中味の変更や政策の新機軸が出てくるわけでもない。
確かに、憲法改正等最近では、政府ではなく、国会自らが取り組まなければならない課題もあるし、党や国会の方から若干の政策・アイデアも出てくるようになったことは認める。しかし、残念ながら、今でも法案の9割は官僚が作り、国政の重要課題は、首相とその周りの一握りの人間だけで決めている。「官僚主導から政治主導、国会主導」、本来そうあらねばならないが、多額の税金を投入しているだけのアウトプットを、国会が出しているかというと、残念ながら、答えは「NO」なのである。
官邸で首相を五年もやると、小泉さんも、こうした現状がいやというほどわかってくる。もう一度言う。確かに、今回の「延長せず」は「安倍氏支援」「面倒くさい」という側面もあるだろう。しかし「国会がなんぼのもんか。それより、もうやりたいことを最後やらせてもらう」というのが、案外、小泉首相の本音なのである。
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