『呆れ果てた政府の情報能力・認識の甘さ』・・・・北朝鮮による麻薬取引・紙幣偽造
2006年4月 3日 tag:
私が出した標記についての質問主意書の回答(内閣衆質164号第162号。3/28付)をみて愕然とした。長らく政府の中にいた私も、これほどひどいとは実は思わなかった。北朝鮮の拉致問題で、あれだけ初動捜査や情報収集等の対応の遅れを批判されながら、まったく反省の色もなく、米国ですら把握している北朝鮮の国家犯罪を「知らぬ存ぜぬ」で通すふてぶてしさ。これでは拉致問題の解決など到底無理だろう。
まず私は、米国務省が3月1日、「国際薬物規制レポート」で、北朝鮮が国家犯罪として麻薬密輸や紙幣偽造を行っていると断じたことについて、日本政府も同じ認識かどうかを問い質した。しかし驚いたことに答えは、「国家犯罪」かどうかを論じる以前のレベルだった。そもそも「御指摘の北朝鮮による麻薬取引・紙幣偽造等に係る行為の実態については把握していない」というのである。
閣議決定された文書で「把握していない」というからには、本当に把握していないと解さざるをえない。後に別の事実が明らかになれば、関係者の責任問題になるからだ。しかし、それで許されるとでも思っているのであろうか。外務省も警察庁も、ここ数年、これだけ拉致問題、すなわち国家主権の侵害と拉致という犯罪行為が問題となっているというのに、当然想定される他の犯罪事案について全く把握していないと開き直るのだ。
ちなみに、米議会調査局によれば、1970年以来、北朝鮮関係者がヘロインなど麻薬、覚醒剤の密輸によって逮捕されたケースは20カ国で32件にのぼり、そのうち、外交官や情報機関員と思われる人物が関与していたケースは、少なくとも11件あると指摘している。
ただ、米国務省が「日本での過去の麻薬押収事件のうち、30%~40%は北朝鮮に関連している」と指摘したことについては、さすがに「平成9年~14年までの間に警察が検挙した覚せい剤の大量押収事件における総押収量の約35パーセントが北朝鮮を仕出地とするものである」とした。唯一目新しい事実だが「このうち、北朝鮮当局が関与した事件は、現在のところ確認されていない」ときた。元首相秘書官を馬鹿にしてはいけない。これは明らかに「嘘」である。
今、国際社会で問題となっているのは、北朝鮮の政府機関や政府当局者が、麻薬や偽造紙幣の流通によって得た資金を、海外の金融機関を使って、マネーロンダリング(資金洗浄)しているという事実である。これで米国はマカオの銀行に金融制裁を課した。また、北朝鮮が、「スーパーノート」と呼ばれる精巧な偽ドル札の製造に関与していることも大問題となっている。にもかかわらず、この回答書からは、こうした事態を真摯に受け止め、日本政府が自らの問題として真相究明しようという気など微塵もうかがわれない。
拉致問題等北朝鮮と諸懸案の解決のためには、国際世論を味方につけ、北朝鮮に対する国際的包囲網を形成していくことが有効な「圧力」となる。その意味で、北朝鮮の国家犯罪を詳細に把握し、それを北朝鮮に突きつけ、かつ国際社会に積極的に発信していく必要があるのである。「所要の情報収集を行い」とか「国際社会との一層の連携に努める」とか「北朝鮮に対して国際社会の一員としての責任ある対応を求めていく」とか、相変わらず「言葉遊び」に終始している日本の外交に、横田めぐみさんをはじめ拉致被害者の奪還を図ろうとする気概はない。
官邸の拉致問題特命チーム(議長・鈴木政二官房副長官)も、「法執行班」を設け、法の適用厳格化による北朝鮮への圧力強化策を話し合うとのことだが、その前提たる事実関係すら把握していないようでは、実のある対策など期待できるわけがない。
(読売新聞が上記質問主意書を引用・・・3/29朝刊)
「押収覚せい剤の35%は北朝鮮から、当局関与は未確認」
政府は28日、1997年から2002年までに警察が検挙した1キロ・グラム以上の覚せい剤押収事件で、押収量の約35%が北朝鮮からのものだとする政府答弁書を決定した。
ただ、北朝鮮当局が関与した事件があるかどうかについては、「今のところ、確認されていない」としている。江田憲司衆院議員(無所属)の質問主意書に対する回答。
政府関係者によると、北朝鮮は経済状況が急速に悪化した1990年代から、覚せい剤密輸など非合法ビジネスを活発化させたという。特に、日本近海に出没した北朝鮮工作船が、工作員の出入国や覚せい剤売買など違法な活動をしている疑いがある。
1998年に高知沖で200キロ(当時の末端価格120億円相当)が押収された事件では、日本の暴力団員が北朝鮮に入って荷造りをするなど、暴力団の関与した事例も多い。
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