北朝鮮による国家犯罪を摘発せよ・・・・米国務省『国際薬物規制レポート』
2006年3月20日 tag:
米国務省は3月1日、「国際薬物規制レポート」(以下「レポート」という。)を発表し、北朝鮮の政府機関や政府当局者が、麻薬や偽造紙幣の流通によって得た資金を、海外の金融機関を使って、マネーロンダリング(資金洗浄)した「確かな証拠がいくつもある」と指摘した。特に北朝鮮が、「スーパーノート」と呼ばれる精巧な偽ドル札の製造に関与していることも明らかにしている。
米議会調査局も、その「麻薬密輸と北朝鮮」で、1970年以来、北朝鮮関係者がヘロインなど麻薬、覚醒剤の密輸によって逮捕されたケースは20カ国で32件にのぼり、そのうち、外交官や情報機関員と思われる人物が関与していたケースは、少なくとも11件あると指摘している。そして興味深いことに、先のレポートによれば「日本での過去の麻薬押収事件のうち、30%から40%は北朝鮮に関連している」という。
一体、日本政府は、このような事実を把握しているのかいないのか。把握しているならどの程度把握しているのか。また。米国務省は、これらの麻薬取引・紙幣偽造等を、北朝鮮政府による「国家犯罪」ととらえているが、日本政府も同様にとらえているのか、それとも、北朝鮮政府が主張するように、一部不届き者による「個人的な犯罪」ととらえているのか。これらの点を明らかにするため、私は、今週、今国会5通目の質問主意書を、小泉首相あて提出する。
ちなみに、前NSC(国家安全保障会議)アジア上級部長マイケル・グリーン氏も、日本メディアのインタビューに答え「経済発展に失敗した北朝鮮は、麻薬や偽のドル紙幣などの密輸を国家の重要な財源にしている」と指摘している。また、元北朝鮮最高幹部・黄長燁氏も「紙幣を偽造するとか麻薬を製造するとか、それを金正日の許可なしに絶対にすることはできない」と断言している。
こうした麻薬取引、紙幣偽造等の不正行為で得られた資金は、金正日総書記への献上品や大量破壊兵器の製造、在外公館の維持運営費用にも充てられているといわれる。私が日本政府高官から聞いた話でも、北朝鮮の在外公館では、半ば公然と、麻薬取引や偽札づくりが常態化しているという。
こうした国家的犯罪行為に対しては、米国政府のように「徹底的に調査し、司法の下で、すべての法律を駆使し刑事訴追する」といった取り締まりを今後強化していくべきである。そして、拉致問題をはじめ北朝鮮との諸懸案の解決のためには、国際世論を味方につけ、北朝鮮に対する国際的包囲網を形成していくことが有効であるが、そのためには、以上ふれた北朝鮮の国家犯罪を詳細に把握し、それを国際社会に積極的に発信し、理解と協力を求めていくことが必要不可欠である。さらに、北朝鮮との国交正常化交渉においても、日本政府として、このような国家犯罪の証拠を具体的に提示し、北朝鮮政府への「圧力」としていくことが肝要であろう。
小泉首相は、北朝鮮には「対話と圧力」と言ってきた。私も首相と同じように、いきなりの「経済制裁」には慎重(今週の直言「経済制裁は慎重に」 05/Feb./28)であるが、その前段階として、北朝鮮に「圧力」をかけるやり方はいくらでもあるのである。政府の拉致問題特命チーム(議長・鈴木政二官房副長官)も「法執行班」を設け、法の適用厳格化による北朝鮮への圧力強化策を話し合うとのことだが、以上のことを十分念頭において検討していただきたい。
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