普天間飛行場移設先の再検討を!
2006年3月 6日 tag:
今月末が最終報告の期限だというのに、沖縄・普天間飛行場の移設先の、地元との調整がまったく進んでいない。小泉首相も、キャンプ・シュワブ沿岸部案について「地元の理解を求める」と言うだけで、「受け入れられない」とする地元と完全な平行線だ。業を煮やして先週末、私は、本件について質問主意書を首相宛提出した。
そもそも普天間飛行場の返還は、橋本政権時(96年4月)、「米兵の少女暴行事件」に端を発した沖縄の基地負担軽減の一環として、日米トップレベルの合意で約束されていたものだ。私は、その政策決定時の当事者の一人(首相秘書官)だった。
問題は、なぜ、今の政府案が、当初構想された名護市辺野古の「沖合」ではなく、一部陸地を含む「沿岸」となったか、だ。
SACO最終報告(平成8年12月2日)では、移設先として3つの具体案、すなわち、(1) ヘリポートの嘉手納飛行場への集約、(2) キャンプ・シュワブにおけるヘリポートの建設、(3) 海上施設の開発及び建設について検討された。その結果、(3)「海上施設の建設を追求」することとされたのである。理由は、「海上施設は、他の2案に比べて、米軍の運用能力を維持するとともに、沖縄県民の安全及び生活の質にも配意するとの観点から、最善の選択」だったからだ。
今回、この考え方をとらず、かつ、あえてこれまでの計画地(沖合)を変更してまで、キャンプ・シュワブ沿岸部の陸地に一部かかる案にしたのか。まさに、ここに、安全・騒音・環境面等への、周辺住民の懸念からくる最大の反対理由があるのである。
また、なぜ、新たに建設される飛行場が、「海上施設」ではなく「埋立方式」なのか。同じくSACO最終報告では、「海上施設は、軍事施設として使用する間は固定施設として機能し得る一方、その必要性が失われたときには撤去可能なものである」ともされ、今後の国際・軍事情勢如何によっては、沖縄の基地負担軽減に大いに資する可能性も考慮されていた。
そして、それを担保するために、その海上施設の「工法」として、当時の技術専門家グループは、(a) 杭式桟橋方式(浮体工法):海底に固定した多数の鋼管により上部構造物を支持する方式、(b) 箱(ポンツーン)方式:鋼製の箱形ユニットからなる上部構造物を防波堤内の静かな海域に設置する方式、(c) 半潜水(セミサブ)方式:潜没状態にある下部構造物の浮力により上部構造物を波の影響を受けない高さに支持する方式、いずれも実現可能としたのである。
にもかかわらずその後、「普天間飛行場代替施設基本計画」(平成14年7月29日・第九回代替施設協議会)では、「埋立工法」で建設することが決定された。埋立は、上記三つの工法と異なり、恒久施設化する可能性が高く、また、藻場やリーフの破壊、海流の変化による生態系への悪影響等環境への負荷が著しく大きいという欠点がある。にもかかわらず、誰が、なぜ、どういう経緯で、SACO最終報告の趣旨を無視してまで、このような決定を下したのか。そこには、土建業者を含む地元利権の構造が背景にあったのではないか?
普天間飛行場の移設先の迷走は、まさに返還合意当時の原点を見失った政府の迷走にある。安全保障上の要請から沖縄県内移設しかないとすれば、周辺住民の安全面や騒音等の環境面、生態系への負荷等の負担を極力軽減し、日米安保上の要請も満たす、そのベストミックスを追求するしかない。
こうした観点から、総合的に検討された結論が、当時のSACO最終報告の海上施設案であり、三つの工法であった。特に、杭式桟橋方式(浮体工法)とされるものは、埋立案に比し、(1) 海底にくい打ちをして滑走路を支えるため、リーフや藻場を痛める度合いも少なく、ポンツーン方式のようにコンクリート構造物の防波堤を設ける必要もなく海流の流れを変えることもないので、生態や環境への負荷も比較的少ない、(2) くい打ちなので撤去可能性もあり、将来固定化しないことで沖縄県民感情にも沿う等のメリットがあるとされた。
代替施設を海上沖合に設置することで、ヘリコプターの飛行経路が住宅地にかかることが避けられ、陸地とは桟橋(連絡路)により接続することが考えられる。これらはすべてSACO最終報告に盛られている内容である。
政府はもう一度、この原点に立ち返って移設案の再検討をすべきと考える。シーファー駐日米大使も那覇市での講演(2/13)で「地元から良い案が出れば耳を傾ける。より良い考え方が出れば、それを採る可能性もある」と述べ、沿岸案の修正もありうるとの考えを表明した。
移設先が決まらないと、いつまでたっても、宜野湾市のど真ん中に位置し、沖縄国際大学でのヘリ墜落事故のような惨事がいつ起こってもおかしくない普天間飛行場の危険はなくならない。
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