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居住者補償基金(保険)の創設を!・・・耐震偽装事件

2005年12月 5日  tag:

 耐震偽装事件を受けて、居住者の安全と新しい住まいの確保を図ることが当面の緊急課題だが、今後のことを考えることも重要である。

 まず、今回の教訓は、いくら住宅品質確保法(2000年4月)により、10年間の瑕疵担保責任(無過失の賠償責任)が義務づけられたとはいえ、その売り主に資力がなければ「絵に描いた餅」だということだ。

 この点では、銀行が破たんした場合の預金払い戻し等のための預金保険機構のように、業界全体で何らかの形で資金を積み立て、今回のような場合に補償する枠組みを構築していかなければならない。現在、一戸建てを中心に、住宅メーカーが加入する保険制度があるようだが、今回のように、マンション等集合住宅の場合にはカバー仕切れていない。

 偽装事件を受けて、ますます世間からの、特に中小業者への風当たりが強まる懸念もあるところ、その信頼、信用回復のためにも、業界上げて、このような住民への補償(保険)制度構築が急務と考えられる。政府の役割としては、その音頭取りと基金への税制優遇措置等が考えられる。

 また、今回の事件では「指定確認検査機関」のずさんな検査実態も浮き彫りにされた。どこの業界にも「悪い奴」はいる。それをチェックできるかどうかが最重要だ。国土交通省は、指定した民間検査機関48社すべてに対し、年内に立ち入り検査を実施するそうだが、徹底的に審査の実態を確かめ、不適格な機関の指定取消等の厳格な措置を講じてほしい。ただ一方で、検査機関の健全な育成、すなわち財政基盤や審査能力の向上にも配意してほしいものだ。

 中堅どころのマンション一件当たり、建築確認申請料15万円程度では、綿密な審査より、数をこなして採算をとろうという「あこぎな検査会社」も出てくる。そもそも建物の設計費等のソフトが、建設費等のハードに比し「タダ同然」(建設費の3%程度)の扱いをされている、この業界の慣行にも事件の遠因がある。
 審査に当たっても、不審情報等の検査機関間の相互流通、情報の共有化のシステムがあれば良いし、第三者であるNPO法人が容易に審査書類(特に構造計算関係)を閲覧できる体制づくりも必要だ。構造計算の公認プログラムが百もあれば、容易に偽造等も可能となろう。その現状も改めなければならない。

 従来から旧建設省(現国土交通省)は「トンカチ官庁」と揶揄されてきた。これを契機に、建設業全体の悪しき慣行を是正する「産業政策官庁」に脱皮することを切に望みたい。

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