財務官僚の牙城に切り込め!
2005年11月21日 tag:
「暫定税率は維持しながら道路特定財源を一般財源化せよ」。小泉首相が勇んで国土交通大臣に指示した。是非ともやってほしいが、その方針は、いつもながら財務省の振り付け通りだった。
事ほど左様に、「小泉改革」は、日本最大の権力機構「財務省」と二人三脚だった。あの郵政民営化もそうだったし、道路公団の民営化もそうだった。「大蔵族」。故福田赳夫元首相(旧大蔵省主計局長出身。財政再建を旗印)の書生として政治活動をスタートさせ、大蔵政務次官、党財政部会長、大蔵委員長等を歴任した。
その「大蔵族」小泉純一郎氏が、「政府系金融機関」の統廃合で、「一つ」にすると息巻いている。この政府系金融機関には、8機関の役員計84人のうち18人に財務官僚が天下っている。しかも、日本政策投資銀行:小村武総裁、国際協力銀行:篠沢恭助総裁、国民生活金融公庫:薄井信明総裁にみられるように、旧大蔵省の事務次官クラスが、年収3千万で天下る超一級のポストだ。この財務官僚の牙城に、小泉首相は本当に斬り込むことができるのだろうか? これが、今後の小泉改革の成否を占う大きな試金石、リトマス試験紙と言われるゆえんだ。
私は橋本政権で、首相秘書官として「大蔵改革」に取り組んだ。度重なる金融スキャンダル、過剰接待スキャンダルで、大蔵省から不明朗で密室の金融行政を分離するという「財政と金融の分離」問題だった。結局、今の「金融庁の設立」と「大蔵省から財務省への名称変更」という形で改革は結実したが、当時、大蔵省の抵抗は尋常ではなかった。
表向き、周到に練られた緻密な反駁はもとより、その強大な予算査定権をバックに、政界や他省庁はもちろん、識者やオピニオンリーダー等にも周到な根回しをする。政治家は、地元陳情、道路や橋の利益誘導で大蔵省には頭を下げっぱなしだし、各省庁の官僚も予算で首根っこを押さえつけられている。正攻法とアンダーグラウンド双方から、時には情報操作、マスコミ操作も交えて、予算編成を通じた貸し借り勘定を、ここぞとばかり駆使しながら、首相や官邸の外堀を埋めていく。誰一人、大蔵省に立ち向かう政治家や官僚もいない中、首相の命を受けた私への、陰に陽の誹謗中傷も尋常ではなかった。
その「大蔵改革」の時、財政と金融が分離されるなら「テロをも辞さない」と、当時の大蔵省幹部が某財界人に言ったという報道があった。その真偽はともかく、旧大蔵省が仕掛けた「金融ビッグバン」で、北海道拓殖銀行や山一證券が連鎖破たんし、金融パニックになった日本が大不況に突入したことにより政権が転覆したわけだから、結果的には、一種のテロだったとも言えなくもない。特に、山一證券の自主廃業へのプロセスは極めて不可解で、これにより、「財政と金融の分離」論議が一時頓挫したことも事実である。
旧大蔵省はこれまで、「省益、組織防衛のためなら、時の内閣を倒すことも厭わない」と言われてきた。今回の政府系金融機関の統廃合の場合はどうか。一つだけ確かなことは、金融の知識や経験はおろか、財務諸表すら読めない財務官僚(特に主計官僚)に、金融機関の長や役員になる資格はないということだろう。
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