集団的安全保障には積極参加・・・自衛隊の海外派遣
2005年11月 7日 tag:
先週に続いて、安全保障政策を論議したい。私は、「集団的自衛権行使」には反対だが、自衛隊の海外派遣に何も消極的であるというわけではない。ただ、自衛隊は、国際標準からみれば「れっきとした軍隊」なのだから、その海外派遣は、明確な原理原則に基づき行われるべきと考えているだけだ。
これまでの、自衛隊の海外派遣について整理したい。
第一は、「国際平和協力法」(PKO法)に基づく、「平和維持活動」(PKO)や「人道的な国際救援活動」への派遣だ。
PKOとは、紛争地域における停戦状態の維持、紛争拡大の防止、公正な選挙の確保などを行う国連の活動で、安保理決議で、紛争当事者の許可を得たうえで、国連加盟国が自発的に要員を派遣するのものだ。これまで、カンボジアやモザンビーク、ゴラン高原などのPKOに自衛隊が派遣された。
人道的な国際救援活動は、紛争により発生した難民等の救援や被害の復旧のために、PKO以外の形態で行われる活動で、国連では、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、世界保健機関(WHO)などが活動を行っている。自衛隊も、ルワンダや東ティモール等の被災民救援のために派遣されている。
第二は、国際緊急援助隊法に基づく派遣だ。国際緊急援助隊は「海外、特に発展途上国において大規模な災害が発生した場合、被災国政府または国際機関の要請に応じ、救助活動、医療活動および災害応急対策や災害復旧のための活動」を行うものだ。最近では、スマトラ島沖地震やパキスタンでの大地震の際に自衛隊が派遣されている。なお、紛争に起因する難民支援は、この法律ではなくPKO法で対応する。
問題は、これらの枠に収まらない海外派遣だ。米国同時多発テロ以降の米国主導の対テロ戦争への支援がそれで、テロ対策特別措置法やイラク復興支援特別措置法がそれに当たる。これらが、憲法9条により許されないと政府が解釈してきた「集団的自衛権」に踏み込むものであることは先週の直言で述べた。
それでは一体、テロ撲滅や地域紛争解決への国際的取組に、自衛隊は一切関与してはならないのか。私の答えは、「国連の集団的安全保障」、すなわち、安保理決議に基づく国際社会の安全保障活動には、自衛隊派遣を含め積極的に協力すべきというものだ。ただし、それが「武力行使」まで伴うものであるべきかは、今の時点では消極だが、なお留保する。
イラクやアフガンでも、しきりに「国際的取組」ということが強調された。しかし、それが真の「国際的取組」であるためには、今の世界秩序の中では「国連安保理決議に基づく場合」でしかありえない。いくら国連が無為無策、頼りにならない存在であったとしても、それに代わる世界秩序・ルールがない以上、その現実を認めなければならない。その意味では、アフガン攻撃にもイラク戦争にも国連決議はなかった。一方、「湾岸戦争」には、れっきとした国連決議があった。
「国連決議」があるということは、それが「国際社会の総意」であるということを意味し、それへの貢献は「国際社会における信頼と名誉を得る道」であると言える。そして、自衛隊が、当該安全保障活動の指揮下に入れば、憲法9条が禁止する「国権の発動たる戦争」でもなくなる。そして、より、現実的に考えれば、その枠組みの中に入り込んでしまえば、日本及び日本人が、前面で剥き出しの形で紛争の現場に曝される事態が回避でき、先週の直言でもふれた「戦争やテロに常に向き合う国民」になるリスクは、全部とは言わないがかなり軽減できるとも言えよう。
正直、まだまだ、私にとっても思考途上の難しい問題だ。読者の幅広いご批判やご意見を得て、今後とも真摯に検討していきたいと思う。
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