TPPへの疑問、懸念に答える・・・⑥ルール作りを主導すると言っても、もう遅いのではないか?
2011年11月17日 tag: TPP
今から参加しても遅すぎる、参加した時にはルールは既に作られているのでは?
これも、国際交渉の相場観、現実を知らない議論だ。もちろん、交渉スケジュールは守るために全力で努力はするのだが、大体、こんな多国間の交渉でスケジュールが予定どおりいく方が稀なのだ。
WTOのドーハラウンド(決裂中)がその象徴だが、他にも、APECの「ボゴール宣言」(1994年11月)の「先進国の域内貿易・投資の自由化は2010年までに」という首脳合意は守られていないし、EU‐GCC(湾岸協力会議)のFTA交渉に至っては20年以上も継続している。
このTPP交渉自体も、一年前の横浜APECでは、このホノルルで妥結することになっていた。それがご案内のように、今回は「大枠合意」でお茶を濁され、来年以降に延ばされた。総じて、無難な領域では合意もみたが、各国間で争いがある領域、センシティブな領域(例外品目等)はすべて持ち越された。また、オバマ大統領は「来年中の妥結」を表明したが、あくまでも希望的観測にすぎない。
元USTR代表のヤイタ―氏も、読売新聞紙上(11/13)で以下のように述べている。「TPPの現状は、既参加9カ国の間で合意しやすい分野での大枠合意でしかなく、これからが正念場、本番という位置づけである。また、一応、米国USTRの公式見解は最終合意は一年後となっているが、実際は来年合意は難しく、最低でも二年はかかるだろう。多国間交渉ではよくあることだ」。
だから、何も日本は焦る必要はない。今参加表明しても、実際に参加できるのは来春以降(他の9カ国の承認に時間がかかるため)なので遅すぎるという指摘も当たらない。これが、良い悪いは別にして、国際交渉の現実なのだ。
(シリーズ/TPPへの疑問、懸念に答える)
⑤食品の安全が脅かされる
④ISD条項で外資の日本への訴訟が頻発
③一旦TPP交渉に入ると離脱できない
②貿易自由化はTPPではなくFTAやEPA等二国間交渉で進めるべきだ
①TPPは米国の陰謀、日本狙いうちの輸出倍増策だ
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