TPPへの疑問、懸念に答える・・・④ISD条項で外資の日本への訴訟が頻発
2011年11月15日 tag: TPP
まず、反対派は、まるでTPPでISD条項がはじめて盛り込まれるかのように国民をミスリードするが、この条項は、国際的には既に1960年代以降、二国間の投資協定やEPA等に「標準的に規定」されている、「標準約款」のようなものである。
現に、日本でも、1978年の日・エジプト投資協定以降、20を超えるISD条項を含む投資協定を締結しているが、これまで一件の提訴もない。
むしろ、このISD条項は、日本企業が今後、新興国、発展途上国等に投資をしていく上で、内国企業より不当に差別され、理不尽な政策や規制の変更により損害を被った場合に、相手国政府を訴えられる制度である。公正な紛争処理手続きを多国間で設けることにより、日本の規制が不当だと訴えられる可能性よりも、日本が得られるメリットの方がはるかに大きい。
反対派はよく、米国化学企業がカナダ政府をNAFTAの仲裁法廷に訴えた事例を引き合いに出すが、この件では、同時にカナダの国内企業が国内の法廷に訴えて勝訴したことからもわかるように、そもそもカナダ政府の行為の違法性が認定された結果である。国内法でも問題となるケースでは外国企業に訴えられても仕方がない。
また、反対派は、米国政府が、この枠組みで同様に相当程度、提訴されている事実を言わない。いずれにせよ「双方向」なのである。もちろん、この条項があれば、将来、日本政府が訴えられる可能性はあるが、前述のように、日本企業のメリットの方がはるかに大きい。
最後に、確かに、反対派の言うように、豪州は、①先進国間では双方の裁判所が信頼に足りるので国際的な仲裁を利用するメリットが大きくないこと、②提訴されるリスクを負いたくないこと、を理由として、米国、日本とのEPA交渉でもISD条項を盛り込むことに反対しているが、本当に国益を守るために必要なら(私はそうは思わないが)、その豪州と連携して、最後までこの条項に反対すればいい。TPPのような多国間交渉では、日本と豪州が反対する条項は、当然だが、合意できず、協定にも盛り込まれない
(シリーズ/TPPへの疑問、懸念に答える)
③一旦TPP交渉に入ると離脱できない
②貿易自由化はTPPではなくFTAやEPA等二国間交渉で進めるべきだ
①TPPは米国の陰謀、日本狙いうちの輸出倍増策だ
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