TPPへの疑問、懸念に答える・・・①TPPは米国の陰謀、日本狙いうちの輸出倍増策だ
2011年10月29日 tag: TPP
TPPについては、農協のように、自らの既得権益を守りたいという一心でのデマゴギーもあるが、やはり、国民の間には本当に心配、大丈夫?という不安もあるので、それに対し、できる限り、誠実に答えていきたいと思う。今回からシリーズで「TPP反対派」の主張を逐次取り上げていきたい。
一回目は「TPPは米国の陰謀だ」「オバマの日本狙いうちの輸出倍増策だ」「米国流のスタンダードの押し付けだ」といった主張だ。
これは根本的に的外れの批判だ。まず、当初、米国はTPP参加には消極的だった。提唱国(P4)、特にシンガポールは熱心に米国を説得したがつれなかった。
それが変わったのが中国の台頭である。アジア太平洋地域において、軍事的経済的に影響力を増大させている中国とどう対峙するか、向き合うか? WTOドーハラウンドが頓挫し、中国主導の「東アジア自由貿易圏構想」や「ASEAN+3」といったブロック経済圏構想が出現し、このままいけば、アジア太平洋地域の経済・貿易秩序ですら中国に握られてしまう、、、。
中国といえば、レアメタルの輸出停止や投資規制の突然の変更など、西側諸国、資本主義国で市場経済を信奉する国とはやはり違う、、、。こうした国にこの地域を主導されて良いのか。この危機意識が米国を変えた。
元々、米国は日本のTPP参加には消極的だった。今でも米業界は消極的である。例えば、先般、農協のボスが渡米し、米国の農業のボスに会った時、露骨に「日本が入ると、また農業の問題で自由化が阻害される」と言われたという。オバマ民主党政権を支える米製造業労働組合も、日本のようなモノづくりの先端国が入ることは、逆に米にはマイナスと懸念している。あくまで本音は、発展途上国、特に、世界のライジングスター、東アジアの市場を狙いたいということである。
そのためには、日本には入ってもらわない方が良い。これから米国の輸出倍増政策の実現のためには、日本が入って自由化率が下がるより、東アジアの国々に理想の開国をさせた方がマシだ。
この方針を変えたのが、この中国への「危機意識」だったのである。オバマ政権の経済部門より、安全保障部門の意向が優先されたとでも言おうか。そう、このTPPは米国のアジア太平洋地域での安全保障戦略でもあるのだ。
先の日米首脳会談で、オバマ大統領が野田首相に、「日中韓自由貿易協定は進めて、TPPに消極的」な日本に懸念を表明したのは、この理由による。
だから、「日本狙い撃ち」はお話にならない。言うなら「中国狙い撃ち」だ。日本への輸出戦略、そういう意図がまったくないとは言わないが、今の米国輸出に日本が占める比率はたったの5%。一体、今さら、米国が日本に何を売り込もうというのか(個別品目については後に考察)。
米国は戦略的な国だから、もちろん、米国の国益に基づく、それなりの意図はある。当たり前の話だ。多国間の交渉では、各国が国益を背負い、虚々実々の駆け引きを繰り広げる。たとえ、米国がどういう意図をもってTPPを推進しようとしているにせよ、それが日本の国益に合致するものであれば協調すればいいし、合致しないなら拒否すればいい。
要は、アジア太平洋地域で、米国とともに経済・貿易秩序を構築していくのか、いや、米国抜きで中国とやっていくのか、ことは経済だけでなく安全保障にも関わる大問題なのである。
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