「官」を問う・失敗の研究(下)
朝日新聞(12/29) 掲載記事
*自浄作用促す運用・新法を
江田憲司・衆議院議員 「脱藩官僚の会」代表幹事
田母神・空爆長問題の背景には、文民統制の名のもと、制服組を必要以上に政治や権力の場から隔離してきたことがある。政治の側も軍事的な統治能力に欠け、自衛隊の位置づけも場当たり的で、背広組(内局)との溝も大きい。これでは制服組にうっぷんがたまるだけだ。国会答弁に立たせたり、官邸のスタッフにいれたりして、制服組の声が政権中枢に届くような体制も考えるべきだ。
年金記録改ざんの厚生労働省、事故米で不手際があった農林水産省については、少し問題の性質が違うだろう。緊張感のなさが原因だ。
官僚に自浄作用がないのは匿名で責任が問われないからだ。少なくとも局長以上の幹部は政治任用にし、名前を出して仕事をしてもらう。結果、国民に重大な損失を与えた場合は補償させるべきだ。国家賠償法はあるが「故意または重過失がある場合」にしか公務員個人には求償できず、適用例も少ない。運用に限界があるなら、給料や退職金を返上させる新法を作るべきだ。
官僚は新政策や法律を作ることで評価され、実際の執行には無関心という点が無駄に生まれる素地だ。今後内閣府に人事局ができるが、無駄をなくした業績もきちんと評価対象にし、民間人など第三者も入れて評価すべきだ。
またオールジャパンの意識を持つ官僚を育てるため、幹部候補生は人事局で一括採用し各省庁を異動させる。一方、専門職は各省庁で採用するが、癒着排除のため意思決定にはかかわらせず給与等で厚遇する。
私は若い頃は、特殊法人の重要性を並べ立てるなど組織防衛の先兵だった。官僚の手口を知る者として罪滅ぼしの意味もこめて、無駄の解消や行革の骨抜き阻止のために行動している。
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