問う「給油新法」5 ・ ・ ・ 軍事加担の危険考えよ
アフガニスタンでの対テロ作戦は、イラク戦争とは異なり、米中枢同時テロを受けた米国の正当な自衛戦争だと思うが、それに日本が、後方支援といえども軍事的に加担するのは戦後初めてのことだった。
給油活動といえども軍艦の派遣であり、兵たんなくして戦争はできない。敵対する陣営からは、米軍と一緒に日本が戦っていると見られても仕方がない。いくら「後方支援」「非戦闘地域」とオブラートに包んでも、政府の憲法解釈では認められない集団的自衛権の行使に踏み込んでいる。
小泉政権以降、政府は十分な説明責任を果たさないまま、それまでの安全保障政策の相場を大きく踏み外し、なし崩し的に既成事実化してきた。私がイラク戦争への燃料転用疑惑を追及してきたのも、そんな危機感があるからだ。
この考えでいくと、後方支援であれば米国に追随して、世界中に自衛隊を派遣できることになる。米国と同様、日常的に戦争やテロと向き合う国になるリスクを背負うことになるが、それで良いのかと国民に問いたい。
自衛隊の派遣は、国連決議に基づく活動への後方支援に限るべきだ。国連は意思決定が遅い面もあるが、その決議は唯一客観的な国際社会の総意。それに基づく自衛隊派遣なら、世界からも祝福され、かつ敵も少ない。最初から侵略戦争の名目で戦争を始める国はない。ある国が「これは自衛戦争だ」と始めた戦争に追随するのは、歴史的にみても危険極まりない。
海上阻止活動は十六カ国百隻で始まったが、今や五カ国十七隻が参加するだけ。各国はどんどん撤退している。六年も付き合った日本がそれに続いても、何ら国際的に非難されることはない。
今国会で政府は「情報公開は大事」と口では言いながら、海自の給油実態はおろか、海上阻止活動の成果さえ明らかにしない。何か後めいたことがあるのか、そんな態度では新テロ特措法を通す資格はない。
── 東京新聞 2007年11月5日付 ──
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