安倍、新閣僚候補30人に徹底的な"身体検査"
「問題大きい」中堅すでに失格23日、外遊先でインド美人に囲まれ、ご機嫌の安倍首相だが・・・(ロイター)
安倍晋三首相は27日、政権の命運をかけ、内閣改造・自民党役員人事に臨む。参院選惨敗の要因が閣僚らの事務所費問題などにあったため、首相官邸は閣僚候補約30人をリストアップし、徹底的な"身体検査"を行っているという。組閣後、閣僚にスキャンダルが発覚すれば、それこそ「即死」となりかねない。安倍首相は、病巣なき人事で、末期症状を脱することができるのか。
「これまで必ず首相外遊に同行していた井上義行首相秘書官が、今回のインドネシアなど3カ国歴訪には参加していない。身体検査の最後のツメをしているようだ」
官邸周辺は語る。
永田町の「身体検査」とは、首相官邸が閣僚候補について、金銭や異性のスキャンダル、暴力団らとの交際、家族の不祥事といった問題を抱えていないかを調査することを指す。
今回の改造人事は、安倍首相にとって政権浮揚の最後のチャンス。失敗すれば支持率下落に歯止めがかからず、そのまま「退陣秒読み」となりかねない。さらに、新閣僚から、スキャンダルでも飛び出せば、「即退陣」の可能性まで囁かれる。だからこそ、徹底的な身体検査が行われている。
永田町関係者は「すでに30人前後の政治家や民間人が閣僚候補リストに載せられ、チェックを受けているようだ」と明かす。約30人には派閥領袖クラスから初入閣組まで含まれているとされ、"病巣"を抱えた議員が含まれていたという。
官邸周辺は「今回の検査は異例ともいえる厳格さで行われ、内閣情報調査室のスタッフが、政治スキャンダルに詳しいジャーナリストらに直接面会して調べている。テレビによく出てくる中堅議員も閣僚候補に挙がっていたが、『問題が大きい』と判断され、外されたようだ」と話す。
橋本龍太郎内閣の首相秘書官として組閣を2回経験した江田憲司衆院議員(無所属)=写真=は「首相から秘書官に身体検査の指示があるのは組閣の1日前か数時間前。具体的な調査方法は守秘義務があって話せないが、政府が全力を挙げて閣僚候補を調べる。議員個々のデータベースがあるわけではない。ただ、メディアがつかんでいる情報以上に、政府は問題議員に関する独自情報を持っている」と語る。
政府関係者によると、警察や公安調査庁などが集めた閣僚候補の情報を、首相官邸が内閣情報調査室を通じて吸い上げ、厳重な情報管理の下で、秘書官以下の官邸スタッフが身体検査を行うという。
身体検査では何かしらの問題は出てくるが、「問題が深刻なら閣僚に任命されないが、軽微で『発覚しても大事にならない』と判断されれば任命される」(関係者)。
昨年9月に安倍内閣が誕生した際も行われたはずだが、松岡利勝元農水相、佐田玄一郎前行革担当相や長勢甚遠法相ら次々と閣僚スキャンダルが炸裂した。赤城徳彦前農水相に至っては、松岡氏の後任という不手際もあり、党内外から「官邸は身体検査をまともにやったのか」という批判が続出した。
江田氏も「松岡氏の後任に、赤城氏を任命するなど理解できない。官邸スタッフが公開情報である政治資金収支報告書をチェックすればよかっただけ。イロハのイであり、基本中の基本。それすらしていなかった」と呆れ果てる。
このため、今回の検査は『政治とカネ』問題をより徹底させている。
執行部は所属の全国会議員に対し、資金管理団体や政治団体の事務所費など経常経費について、公認会計士などの外部監査を受け、結果を報告するよう求めた。女性秘書による資金流用が発覚した塩崎恭久官房長官ら十数人が相次いで政治資金収支報告書を訂正している。十数人には入閣待望組も目立っている。
一応、失敗の教訓は生きているようだが、江田氏は「参院選では、安倍内閣の危機管理能力が問われた。国民が生命と財産を預けているのに、初歩的な身体検査すらしなかった内閣に『ノー』が突き付けられた。対症療法で取り繕っても、表紙も中身も変えない限り、一度失った国民の信頼は戻らないのではないか」と話している。
── 夕刊フジ 2007年8月24日付 ──
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.