どうする憲法 ~ 国民投票法成立 県内議員に聞く
武力不行使は貫け
憲法改正も、手続法である国民投票法の整備も行うべきだが、安倍首相が「参院選の争点」「政権の最重要課題」とすることには違和感を覚える。国政の現状からすると優先順位は低く、そこに莫大な政治的エネルギーが費やされることを、むしろ懸念する。国民生活の課題を優先すべきだ。
憲法九条は、戦争放棄を定めた一項は堅持し、二項では自衛権や自衛隊の存在を明確に位置づけた方がよい。ただし、将来的に米軍とともに海外で武力行使する道を開く可能性のある集団的自衛権には反対だ。戦後日本が平和裏に来られたのはこの歯止めが大きかった。自民党草案のように集団的自衛権を当然、国が有する権利とし憲法上何も書かないのは、憲法が権力を縛る規範だという基本を忘れている。法律や時の政権の判断に任せればよいというのは危険な考え方で、それはイラク戦争における米国追随の姿をみれば明らかだ。
私も若手官僚のころは「集団的自衛権認めるべし」だった。変わったのは官邸での経験から。権力の中枢たる官邸の危機管理能力や自衛隊のオペレーション能力の危うさ、振幅が激しい世論やメディアの現状にかんがみると、とても集団的自衛権を認めた上で歯止めをといった、頭の中だけで考えた議論が通じないことを思い知らされた。結局、日本人も、世界の警察官たる米国人と同じように、常に戦争やテロと向き合う国民になりかねない。自衛隊の海外派遣は、その国際貢献を通じて諸国民との友好を深め、結果、日本を平和にするために行うものなのに、これでは本末転倒だ。
ただし、国連の集団安全保障、すなわち国連決議(国際社会の総意)の枠組みの中では、自衛隊の派遣も含めて積極的に貢献すべきだ。
憲法前文にあるように、日本が国際社会で名誉ある地位を占めたいなら、「普通の国」になるよりも、国連憲章の描く理想に近い憲法を持っていることに、もっと誇りをもった方がよい。
神奈川新聞2007年5月17日(木)朝刊
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.