2014年9月30日(火) 、衆議院本会議にて、代表質問に立ちました。
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総理の所信表明演説に対する代表質問.pdf
※今回は時間の関係上、一部質問できない箇所がございました。
以下が、江田けんじが安倍総理へ問い質したいことの「完全バージョン」です。
江田憲司でございます。私は維新の党を代表して、安倍総理の所信表明演説について質問いたします。
まず冒頭、この夏の豪雨災害、先日の御嶽山噴火等で多くの尊い命が失われました。謹んでご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。災害対策に与党も野党もありません。我々も国会審議等を通じて建設的な提言を行ってまいりますので、安倍総理、よろしくご検討ください。
さて、維新の党は、日本維新の会と結いの党が合流し、二一日に結党大会を開き、翌二二日、正式に発足しました。
維新とは「維れ新なり」です。すなわち、イノベーション。イノベーションとはシュンペーターの時代の「技術革新」に止まりません。それは、ありとあらゆる「政治経済社会システムの変革」を意味します。
このイノベーションとは、人間の体に例えれば、「新陳代謝」を大いに促進していくということです。日本は今、経済のグローバル化と大競争時代の荒波の中で、この「新陳代謝」が遅れ、国力が停滞し、国民は多くの不安を抱えています。旧い細胞を老廃物として排出し、新しい細胞を作る。そうすることで人間の身体も成長していくのです。
国も同じです、これまでのしがらみ、既得権益、非効率な産業分野を整理して、人的物的資源を新しいフロンティア、成長分野にシフトさせていく。これこそが国の「新陳代謝」、すなわちイノベーションであり、日本の将来を切り拓く、日本再生のための唯一の道なのだと、維新の党は確信しています。
そう、我々は、日本の、日本人の可能性、ポテンシャルを信じているのです。「民間の活力」、そして「地域の底力」を信じているのです。しかし、現状はどうでしょうか。わざわざ規制や許認可といった官僚統制で民間に手かせ足かせをかけ「民間の活力」をそいでいる。そして、相変わらずの「お上意識」の中央集権体制で「地域の底力」を押さえつけている。
我々は、こうした官僚統制を廃し、民間の能力が、活力が、伸び伸びと発揮できるような環境を整備していく。地域のことは地域の人たちが一番わかっているのですから、中央から地域に、権限、財源等を徹底的に移譲し、地域のことは地域で決める。そうすれば、「民間の能力・活力」「地域の底力」で、必ずや日本は再生します。
維新の党は、こうした「イノベーション」、国のありとあらゆる「新陳代謝」を、利権圧力団体に一切依存しない、全くしがらみのない立場から、断行してまいります。是非、国民の皆さんのご理解、ご支援を心からお願い申し上げます。
さて、具体論に入りましょう。
(規制改革・・・成長戦略の肝)
まずは景気・経済、成長戦略についてです。
「大胆な金融緩和」=アベノミクスの第一の矢は確かに飛びました。しかし、景気を持続的かつ本格的に回復させ、その恩恵を国民の給料の引上げ、生活の向上という形で均てんしていくためには、金融=「おカネ」だけでなく、実体経済、すなわち「モノやサービス」を動かす「成長戦略」、安倍総理のいう「第三の矢」を力強く飛ばす必要があります。そう、その肝中の肝である「規制改革」を断行していかなければならないのです。
しかし、規制で守られた「既得権益」から多くの組織票や献金をもらっている安倍自民党に、その「岩盤」を打破する改革が本当にできるでしょうか。維新の党は、しがらみのない立場から、真の規制改革を断行していく、農業や医療、福祉、電力・エネルギーといった日本の将来を切り拓く分野に、株式会社やNPO、個人等を新規に参入させ、経済・産業の新陳代謝を促していきます。
安倍総理は、この規制改革に一見、前向きな姿勢に映ります。官邸主導で霞が関の官僚や族議員も抑えているようにも見える。しかし、その実態は竜頭蛇尾、最初のアドバルーンは高く上がりますが、抵抗勢力の反撃に遭い、ことごとく骨抜きにされているのが現実です。
一つ具体例を挙げましょう。「コメの減反制度の廃止」。「廃止」とは「名ばかり」で、実際は、飼料用米などに転作する農家への補助金を最大で三割上積みし「減反」を促す。「形を変えた減反政策」と言ってもいい。この結果、既存の農家の所得は一三%増になるそうですから「反対」の声が上がらなかったのは当然のことでしょう。結局、税金で賄う補助金が今より増え、農地を手放す兼業農家も減り、農地の大規模化も進まない。これのどこが改革なのか。総理、「減反」という需給調整はやめ、価格下落分は「直接支払い」でやる気のある農家を支え、美味しい日本のコメをドンドン作って輸出してもらいましょう。総理の見解を伺います。
今、農家の平均年齢は六七歳です。しかも跡取りがいない。このまま閉鎖的な農業政策を続けていたら、それこそ一〇年後に日本の農業は死んでしまいます。だからこそ、農業の担い手に新しい血を入れていく、規制を改革し、株式会社の農地取得を可能にしたり、農業生産法人の役員・出資制限などの要件を緩めて、市場志向型の農業へと転換していけばいい。株式会社は利益が上がらなければすぐ農地を放棄して退出するというなら、そこはゾーニング規制の強化等で歯止めをかければ良い。総理、このような農業分野の規制改革、構造改革をどう進めるおつもりですか。
(「市場主義・自由貿易・投資」と「セーフティーネット」の構築)
成長戦略は「規制改革」に止まりません。日本は、好むと好まざるにかかわらず、生き馬の目を抜くような「国際大競争時代」を勝ち抜いていかなければなりません。そのためには、国際標準の制度、ルールで戦うしかない、そう、「フリーでフェアー、オープンな市場主義」が原則なのです。
だからこそ、TPPであれ、FTAであれ、RCEP、APECであれ、自由貿易、自由投資の促進のために、二国間、多国間の交渉、そのすべてに日本は「保険」をかけて積極的に参加、議論をリードしていくべきなのです。資源もエネルギーもない日本が、将来にわたって「メシを喰っていく」ためには、その持てる人材や技術を駆使して、それらを世界中に行き来させ、新しい製品やサービスを生みだし、付加価値をあげていくしかないのです。
その意味で、TPPは特に重要です。この枠組みは、単に「経済」にとどまらず、アジア太平洋地域の「安全保障上の意義」も有しています。マイケルフロマンUSTR代表は私の米国留学時代のルームメイトであり、タフネゴシエイターであることは重々承知していますが、是非、総理、日本の国益はしっかり背負いつつ、一方で、グローバルな見地から着地点をみつけ早期妥結を図っていただきたいと思います。先週の日米閣僚級協議は物別れに終わったと聞いていますが、交渉の現状と総理のTPP交渉の年内合意にかける意気込みを伺います。
企業の競争条件を国際的にもイコールにするという意味で、法人税の実効税率の引き下げも必要です。一挙には無理でも、重要なのは今後の行程表をつくることです。総理、この段階的な法人税引き下げの道筋を示してください。その最終目標はいつまでに何%に置いていますか?
一方で、市場主義、自由貿易・自由投資の世界は、基本的に優勝劣敗の世界でもあります。そのまま放置しては当然、非効率な衰退産業は市場から退場を余儀なくされ、失業者は生まれ、格差も広がってしまう。そういう人たちのために、手厚いセーフティネットを構築しなければいけません。「政治は社会的弱者のためにある」のです。こうしたセーフティネットの構築、整備についての安倍総理の基本的な考え方とその具体策をお答えください。
セーフティネットと言えば、少子高齢化に対応できる、持続可能で、かつ、受益と負担を明確化した「社会保障制度改革」を実現することも不可欠です。
維新の党は、給付付き税額控除制度の導入を通じた最低生活保障の実現、年金制度の積立方式への移行や医療保険の一元化、地域が主体の多様な子育て支援サービスの提供等をその政策にしていますが、今年は五年に一度の年金財政検証の年です。政府が示したシナリオのうち、名目賃金上昇率一.三%、運用利回り二.三%、女性のM字カーブも実勢に近いシナリオでは、二〇五五年度には現在一三二兆円ある年金の積立金は枯渇し、モデル世帯の所得代替率も三〇%台という暗澹たる将来像が示されています。すなわち、このまま無策でいれば年金財政は将来破綻するという予測なのです。総理、この年金制度の抜本改革についてどうされるのか。維新の党のように、世代間で公平な、自らの払った保険料が自らの元に返ってくる、年金制度の積立方式への移行を真剣に検討されたらどうですか。
(消費増税と我が身を切る改革)
さて、アベノミクス失敗への決定的な引き金を引くかもしれないのが、更なる消費増税の強行です。
維新の党も、今後の社会保障費の増大等に応じて、消費増税の必要性を否定するものではありません。しかし、財政再建は「経済成長」と「歳出削減」、「増税」のベストミックスで成し遂げられるのです。千兆円になんなんとする借金を増税だけで返せるはずがありませんし、ムダ削減も徹底的行っていかなければなりませんが、一般会計予算の規模が90兆円台では限界があります。だからこそ、将来にわたって持続的な財政再建のエンジン足りうる経済成長、すなわち「金の卵を産むがちょう」を殺してしまっては元も子もないのです。
その意味で、この四月の増税後の経済指標をみると、とても更なる増税を行える経済体力にないというのが維新の党の考えです。国家運営の基本は、既定路線を単に踏襲するのではなく、時々の状況変化に応じて適時適切に「経営判断」することです。
今の経済は、四~六月期のGDPが年率七.一%減と大幅減になったことに加え、七月も、安倍政権がボーナスが出て上向くとしていた消費がマイナス五.九%と大幅減となりました。増税と物価上昇の影響で、一〇カ月連続でサラリーマン世帯の実質収入が大幅に低下(▼6.2%)したことが大きい。これは単なる「反動減」や天候不順が原因ではなく、家計の実質所得の減少で「購買力」「消費マインド」が落ちているという構造的問題だと私はとらえています。今後、七~九月期の指標を注意深く分析していく必要はありますが、今の経済の体力からして増税できる状況にはない、そのタイミングではないというのが我々の考えです。安倍総理の見解を伺います。
また、総理、消費増税時の約束、国会議員の定数削減の約束は一体どうなったのでしょうか。一昨年末の国会での党首討論でも、総理は議員定数削減を必ず実現すると約束されたじゃありませんか。更なる増税を検討されていると言うなら尚更のこと、ここではっきり国民にお約束いただきたい。総理、如何ですか?
維新の党は、さらにこの機会に「文書通信交通滞在費」の使途公開を提案したいと思います。例の「号泣県議」の一件を契機に、地方議員の政務活動費の問題が大きくクローズアップされている中で、国会議員だけが、月々百万円、年一二〇〇万円の領収書の要らない、公開する必要もない税金をもらっていいはずがありません。また、この程度のことができなくて、どうして国民に消費増税や社会保障の負担増をお願いすることができるでしょうか?
二〇〇一年には衆議院議長の諮問機関「衆議院改革に関する調査会」が「使途報告書提出の義務化とその閲覧・公開」を提言しています。是非、各党各会派の皆さんにも真剣に検討していただきたいのです。維新の党としては、今国会に使途公開のための議員立法を提出し、各党各会派にその実現を働きかけてまいります。仮に、他の政党が反対した場合でも、この一〇月分から他党に先駆けて公開してまいります。総理、消費増税を実行に移した政権であるだけに、是非、自民党総裁として自らが主導され、この「文書通信交通滞在費の使途公開」を実現しようじゃありませんか。見解を求めます。
さらに言えば、大震災の復興財源に充てるため、また、議員定数の削減が実現するまでの間、国会議員の歳費を二割カットしていたのに、なぜこの五月に元に戻したのか。当時我々は、国民に消費増税をお願いするのだから当然と、逆に議員歳費の三割カット法案を提出しましたが、自民党や民主党には見向きもされませんでした。こんなことが一体、世間の常識からして許されるのでしょうか? 総理、再考してください。
安倍政権になって、歳出のムダ削減も全く不十分です。消費増税分は社会保障経費に充てると言いながら、実際は「震災・防災対策」「国土強靭化」という美名の下に、ムダな公共事業をバラマキ、かつ、消化しきれず年二兆円から四兆円の使い残しが出ているのが現状です。今や、公共事業予算は、補正予算等を入れて例年の倍の10兆円規模で推移しています。総理、「金に色目はない」のです。消費税収を区分経理し特別会計に入れているならともかく、これでは消費増税で出た財源を公共事業に回していると批判されてもしょうがないでしょう。公共事業以外でも、消化しきれない巨額の基金が天下り法人にたまったままです。復興予算の流用も目立ちます。
総理、もうこんな財務省流のまやかしはやめましょう。見解を求めます。
消費税の更なる二%増税で得られる年間五兆円の財源。この程度の額は、議員や公務員の「身を切る改革」や歳出削減で賄えます。例えば、国、地方の公務員の総人件費二五兆円を二割カットするだけで五兆円出てきます。総理、やりましょう!見解を求めます。
増税と物価上昇で国民は負担増に苦しみ、しかも景気は本格的には回復しない。その間の「バラマキ」で財政は肥大化し、そして背負いきれない借金だけが残る。この「最悪のシナリオ」に向けて、日本は今、舵を切りつつあります。総理、自民党や公明党からは、またぞろ「消費増税のためにも補正予算の編成を」という声が上がっていますが、されませんね、総理。明確にお答えください。「国破れて財務省あり」。絶対にそうさせてはならない!それが政治の責任だと私は考えています。
(地方創生と地域主権改革・・・中央集権体制の打破)
さて、二つ目のイノベーションは「中央集権体制の打破」、すなわち、「地域主権改革」です。
安倍総理、なぜ、政府は、相変わらずの中央集権体制で「地域の底力」を押さえつけているのでしょうか。地域のことは地域が、地域の市町村長や住民の皆さんが一番分かっているのです。安倍政権は、この臨時国会最大のテーマに「地方創生」を掲げ、専任大臣まで置いて関連施策を推進すると言います。しかし、なぜ、相変わらずの「お上意識」で、中央から地方を見下ろす「上から目線」で地方を創生しようとされるのか。
維新の党は、この「中央集権」を打破し、地域のことは地域で決める。中央、すなわち、霞が関官僚、族議員から、基礎自治体、市町村に権限・財源・人間を徹底的に移譲し、地域の実情に応じたきめ細かい行政を行う、「地方創生」も地域で決める。安倍総理が所信表明演説であげた地域の成功事例は、何も安倍政権のおかげでも何でもなく「地域の底力」そのものなのです。霞が関で椅子にふんぞり返っている役人に地域のことはわかりません。
安倍政権になってから、この「地域主権」「分権改革」には極めて消極的です。それは、自民党の"国土強靭化族"が進める「十年間で二百兆円」の公共事業、こうした権益を手放したくないからではありませんか?「地方創生」とは、またぞろその美名の下に、この公共事業のバラマキに終わってしまうのではありませんか?この八月末で締め切られた来年度予算の概算要求でもそれが顕著です。ついにその総額は一〇〇兆円を突破しました。つい数年前の一般会計予算の規模が八〇兆円台だったことを思えば、とても消費増税では追いつかない歳出規模が続いているのです。総理の見解を伺います。
また、この全国的な公共事業のバラまきが、東北の被災地の復興の明らかな足かせになっています。資材・人材の不足、そのコストの急上昇等がその大きな要因です。総理、「日本の再生は被災地の復興から」ではなかったのでしょうか?ご見解を伺います。
自民党政権は、数年前から「道州制」の検討を行っています。しかし、一向にその法案が国会に提出されません。安倍総理、もう諦めたのでしょうか?そうじゃないとおっしゃるなら、この「道州制」実現に至る道筋をはっきり示してください。
これに関連して、橋下大阪市長、松井大阪府知事が推進している「大阪都構想」は「地域主権改革」の象徴です。しかし、大阪自民党は、この足をひっぱり続け、安倍政権の成長戦略に沿った上下水道や地下鉄等の公営企業体の民営化にも強く反対しています。中央と地方がバラバラでは、地域主権改革も成長戦略も進みません。是非、安倍総理もその実現に力を貸していただきたい。自民党総裁としての強い指導力を求めたいと思いますが、見解をお聞きします。
(原発エネルギー政策)
電力・エネルギー部門も、日本の将来を牽引する成長分野です。そしてここでも、規制改革、すなわち、電力の再編自由化が必要不可欠です。
発電から送配電を分離して民間に開放すれば、それを使って色々な会社が参入してきます。あたかもNTTの通信回線を開放したら多くの電話・通信会社が参入してきたのと同じです。そして、競争効果で料金も格段に下がった。そうした機会、チャンスさえ与えれば、地域分散型の電源開発や電力の地産地消も可能となり、それが雇用や所得を生み、地域の活性化にも必ずつながります。「総括原価主義」のような「親方日の丸」のコスト算定方式もあらため、競争で電気料金も下がっていけば、もう安くもない原発は、市場メカニズムによって近い将来フェードアウトしていくと維新の党は考えています。
総理、こうした電力の再編自由化に向けた具体的方策とその工程表について明らかにしてください。また、米国エネルギー省も原発はもはや一番高い電源だと位置づけているのに、なぜ政府の「エネルギー基本計画」で「重要なベースロード電源」と位置付けたのか、その理由をお聞かせください。
維新の党は、原発の再稼働を全く否定するものではありません。しかし、現状のように、再稼働の安全性に誰が責任を持つのか、政府なのか原子力規制委員会なのか事業者なのか、それすら不明確な状況で再稼働させるべきではないと考えています。加えて、事故時の避難計画の実効性の担保や再稼働の前提となる三〇キロ圏内の地元同意、「核のゴミ」の処分場確保の見通しや原子力損害賠償法の見直し等について不透明なままでは尚更のことです。
特に、川内原発については、避難計画が不十分でその実効性が疑われている、地元の同意が得られていない、特に御嶽山の噴火にみられるように火山噴火への対応が全くできていないといった状況では、とても再稼働など考えられません。総理の見解を求めます。
(法と秩序に基づいた現実的な外交・安全保障政策の展開)
現在、世界をめぐる国際情勢・安全保障環境は複雑さを増しています。国際社会のパワーバランスが変化する中、アジア太平洋地域の重要性が急速に高まり、日米関係の基軸たる日米同盟の意義も益々重くなっています。特に北東アジア地域では、領域主権や権益をめぐる対立や核開発を強行する国もあり、ひとつ間違えば、国民の生命・財産に重大な影響を及ぼし得る状況となっています。
維新の党は、国民の生命・財産や領土を守るため、平和主義を掲げる憲法の理念を踏まえつつ、昨今の安全保障環境の変化に対応し、憲法で許される「自衛権の範囲の明確化」=「自衛権の再定義」をいたしました。
すなわち、憲法に定められた「平和的生存権」や「幸福追求権」の趣旨に鑑みれば、仮に、わが国が直接的に武力攻撃を受けていない状況下であっても、わが国と密接な関係にある他国に対する攻撃の結果、わが国にも戦火が及ぶ蓋然性が高く、国民の犠牲も深刻なものになる場合には、それを阻止し我が国を防衛するために「自衛権」を行使することは、憲法解釈として許容されると考えます。
もちろん、再定義された「自衛の措置」については範囲の拡大や濫用にしっかり歯止めを掛け、憲法の制約と安全保障上の要請を精緻に判断した上で包括的な法整備にも取り組むこととしたいと思います。
以上のような維新の党の基本的な考えに基づき、世上「集団的自衛権の限定容認」と称される閣議決定について、安倍総理の見解を質していきたいと思います。
この閣議決定文は八ページにも及びますが、私には、その美しい?「官庁文学」に彩られた文章からは、どうしても「集団的自衛権の限定容認」という意味が読み取れません。そこに「集団的自衛権」という六文字は一箇所だけ。しかも「主文」ではなくて傍論的なところに「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がある」と書かれているだけです。しかも、閣議決定後の会見で、安倍総理も「集団的自衛権が現行憲法の下で認められるのかといった観念論ではなく」「新三要件は今までの三要件と基本的考えはほとんど同じ」とも言われています。極めつけは「国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある」。ここまでくると、究極の戦術的「あいまい戦略」だと思うのですが、総理、この閣議決定はいわゆる「集団的自衛権」を「限定容認」したものなのか、明確にお答えください。加えて太田国務大臣、公明党も同じ認識、理解で良いのか、お答えください。
閣議決定文の詳細に入ります。
一つは、「他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」というのは、現行の防衛出動の要件とどこがどう違うのでしょうか。ちなみに、内閣法制局長官が七月の予算委員会で明らかにした「明白な危険」の定義とは「国民に武力攻撃と同様の深刻、重大な被害、戦禍、犠牲が及ぶことが明らか」というものです。防衛出動の要件も、武力攻撃の発生だけでなく「切迫」していれば十分とされています。総理の見解を伺います。
さらに、武力行使については「国際法上の根拠と憲法の解釈は区別して理解」とは一体どういう意味ですか。お答えください。
国際法上、「集団的自衛権の本質・性格」については諸説あります。国際法の有権解釈権をもつ国際司法裁判所の見解は「他国防衛説」といって、集団的自衛権は「他国を防衛する権利」、すなわち、正当防衛概念のうち「他人の権利の防衛」に対応する国際法上の概念とされます。一方、安倍総理、日本政府の見解は「死活的利益防衛説」にあたり、「他国への武力攻撃で自国の死活的な利益が害された場合に行使」するのが「集団的自衛権」とされる。しかし、これは異端、少数説なのです。
今回の閣議決定は、他国への攻撃を契機とはしているものの、「他国防衛」ではなく「自国防衛」の趣旨を明確にしています。先の予算委員会でも公明党の北側議員もそう断言しました。そうなら、それは国際法上も「個別的自衛権」の範疇に入るものです。私が予算委員会で、政府が示した「15事例」について、架空の事例を除き、これまで必要以上にその範囲を狭めてきた「個別的自衛権の解釈」を、国際標準に合わせて「適正化」することで十分対応可能と主張したのに対し、安倍総理や外務省が「それは国際法上おかしい」と批判されましたが、逆に私は今「安倍総理、貴方の方がおかしい」と申し上げたいと思います。反論がありますか。
国際標準の「集団的自衛権」の定義と日本政府独自の定義の違いは、以上のとおりですが、それをさらに複雑にしているのが、近時の核や弾道ミサイル等の武器技術の飛躍的な進展です。「個別的自衛権」と「集団的自衛権」の外縁が交わる、重なり合うようになってきたのです。
例をあげましょう。日本海で米国の艦船が攻撃されたとします。昔なら、朝鮮半島から対艦砲で大砲の玉を米艦船に当てても、そんな玉が日本まで届きようがない。したがって、その場合、日本が米艦を守るのは明らかに「集団的自衛権の行使」(他国を守る権利)です。しかし、今はどうか。北朝鮮のノドンミサイルが二〇〇発以上、日本に向けられている状況下で、同じように米艦船がミサイル攻撃された。その場合は、間髪をいれず在日米軍基地、すなわち日本本土がミサイル攻撃される蓋然性が高いでしょう。米軍基地から一斉に反撃されるのがわかっているのに、同時にそこを叩かない間抜けな司令官は北朝鮮にもいないからです。
したがって、こうした状況は、まさに日本への「武力攻撃が切迫」していると言えるので、その米艦船を守るのは「個別的自衛権の行使」とも言えるのです。ただ、それは見方によっては「集団的自衛権の行使」とも言える。ここが両者が重なり合う部分、「限界領域」の部分なのです。
こうした議論は、何も維新の党だけがしているわけではありません。国際法の権威である中谷和弘東大大学院教授も同様の指摘(中谷和弘「集団的自衛権と国際法」村瀬信也編『自衛権の現代的展開』東信堂2007年、50頁。)をされています。具体的に、日本のために派遣された公海上の米艦防護、シーレーン上の船舶の安全確保、そしてミサイル防衛等を例にあげて、「集団的自衛権の外縁」を論じています。個別的自衛権か集団的自衛権かは「現実には区別が相対化される場合もある」とされているのです。まさに我が意を得たりです。
維新の党は、この「個別的自衛権」と「集団的自衛権」が重なり合う部分を今回、限定的に認める。「個別的自衛権」とも「集団的自衛権」とも解せる部分なので、我々は「自衛権の行使」「自衛上の措置」という言葉を使って認める、何も曖昧にして逃げているわけではありません。そもそもの両者の定義自体が武器技術の進展等で相対化しているのですから、あえてそんな観念論争、神学論争はしないということです。その意味で、マスコミがはやし立てるような、旧日本維新の会と旧結いの党で全く違いはないのです。
一言で言えば、維新の党は、他国への攻撃であれ、自国への攻撃であれ、その結果、日本国民の生命・財産、領土に重大な戦禍、犠牲が及ぶ可能性が高い場合には、日本を守るために「自衛権を行使」するということで完全に一致しているのです。したがって、我々が政権をとっても、自衛隊への指揮命令、オペレーションでまったく齟齬はありません。
しかし、そんなことよりゆゆしき問題は、現実に自衛隊への指揮命令権限を持つ、安倍政権内の不一致の方でしょう。現実の安全保障、危機管理を担い、日々それに直面している政府与党、自民党と公明党が、具体的事例への対応で違いがあるという方がよほど国民にとって深刻なことでしょう。危機はいつ降りかかってくるかわかりません。にもかかわらず、このままでは国の防衛方針が決まらない、自衛隊への指揮命令が発せられないという事態にもなりかねない。
そこで伺います。安倍総理、シーレーン防衛のための機雷掃海は、今回の閣議決定で可能になるのでしょうか? 太田国務大臣、公明党は反対ということのようですが、それで良いですね。お二人に見解を求めます。さらに、国連の「集団安全保障」への対応についても、自民党と公明党に大きな違いがあると伝えられています。昨今、国際社会からは、集団的自衛権行使よりも、この「集団安全保障」への協力の方がはるかに求められる場合が多いのです。しかし、この点でも自民党と公明党に大きな齟齬があるというのは、看過できない重大問題です。安倍総理、大田国務大臣の見解を求めます。
先日、山口公明党代表がNHK「党首に聞く」で、今後の関連法案づくりのことを聞かれ、「閣議決定には、憲法の解釈として集団的自衛権行使は認めるとは書いていない。その後の国会論議、予算委での内閣法制局答弁と総理答弁。それをしっかり踏まえて法律を整備していくことが重要。その核心は、これまでの個別的自衛権と同様の、国民の被る被害の深刻性、重大性、それがある時に許されるということだ」と述べられました。それに対し司会者が「政府部内の検討が今の山口さんのご指摘に沿ったものになるのかどうか、まさに国民も注目している」と返していますが、安倍総理も、今後の関連法案の整備について、この山口代表と同じお考えなのか、お聞きします。また、こうした関連法案の前提となる、安全保障政策の基本的な法制整備をされるおつもりがあるかどうか、についてもお聞きします。
最後に、いずれにせよ、維新の党は、こうした憲法解釈は、三権分立の確立と憲法保障の観点から、憲法裁判所もしくは最高裁判所の憲法部等の抽象的な憲法判断によることが必要と考えています。総理の、この点についての見解も伺います。
もう時間がありません。外交上の諸課題については、今後の国会審議にゆだね、ここでは、北朝鮮による拉致問題についてお聞きします。拉致被害者の再調査に大きな期待が集まりましたが、「9月の第二週以降」とされていた最初の報告が延期されてしまいました。家族の皆様のお気持ちを思うと言葉になりません。総理、昨日も外務省局長級の協議が行われたということですが、今の調査の現状と、この事態をどう打開されていくおつもりか。お答えください。
(おわりに)・・保守リベラルを超えた政治で改革勢力を結集
最後にもう一度申し上げます。維新の党は、日本再生のため、日本の将来を切り拓くため、既得権益を打破して、国民本位の真の改革、イノベーションを断行していきます。
もはや、「保守だ」「リベラルだ」といったイデオロギーで国の方向性を指し示す時代は終わりました。維新の党は「保守vsリベラル」を超えた政治を目指します、それは、内政、外交とも、イデオロギーではなく、政策毎に国民の立場にたって合理的に判断することにより可能となります。そして、国政の根源的な課題を次世代に先送りせず、将来に向けた持続可能な制度・仕組みを構築してまいります。
「我々は一致団結しなければならない。さもなくば確実に別々に吊るされるだろう」(We must all hang together, or assuredly we shall all hang separately)。アメリカ合衆国が独立宣言をする時、ベンジャミン・フランクリンが強大な大英帝国を想定し、述べた言葉です。今、安倍自民党の「一強多弱」と言われる政治状況の中で、緊張感のない、切磋琢磨することのない政治は必ず「慢心」を生みだします。競争なきところに国民本位の政治はありません。ゆえに、維新の党は、巨大与党、安倍自民党に対抗し得る、政権担当可能な一大勢力を形成するため、政治理念や基本政策の一致を大前提に、野党再編、政界再編を率先して推進し、改革勢力を結集していく決意であります。そのことを最後にお誓い申し上げ、私の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
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