第50弾 食の安全・安心のためのトレーサビリティシステムに関する質問主意書、及び、その答弁書
2008年3月19日 国会活動 | 活動報告 tag: トレーサビリティシステム , 農林水産省 , 食の安全・安心
食の安全・安心のためのトレーサビリティシステムに関する質問主意書
昨今、食品からの農薬検出や、偽装表示事件等により、消費者の食品に対する不安が高まっている点に鑑み、食の安全・安心を担保するシステムの導入及び運用の適正化を図る観点から、以下の通り質問する。
一 、
農林水産省において行っている「トレーサビリティシステム導入促進対策事業」について。
農林水産省のホームページにて公開されている文書「トレーサビリティシステム導入促進対策(食の安全・安心確保交付金)」によれば、「すべての食品を対象に、各食品の特性を踏まえたトレーサビリティシステム導入のために必要なデータベースの構築、情報関連機器や分析機器の整備等を支援する都道府県に対し、交付金を交付する」とのことであるが、
1.
いつから何年計画で行っているのか。
2. 「すべての食品」とは、文字通り、すべての食品を対象とすると理解してよいか。農畜産物のみならず、加工食品等も含むと理解してよいか。具体的に答えられたい。
3. 現在までのところ、この交付金でトレーサビリティシステムが構築され、稼働している食品の数と、全体の計画数からの達成率を答えられたい。
二 、
会計検査院の検査によれば、平成15年度から16年度にかけて実施されたトレーサビリティシステム導入促進対策事業において、「トレーサビリティシステム導入促進対策事業で構築したシステムが稼働しておらず、補助の目的を達していない」事業が多々見受けられる。以下に挙げる具体的事例につき、その後の是正状況、国庫への損害の総額につき、具体的に答えられたい。
1.
平成16年度決算指摘事項
(1)
安全野菜栽培協議会(千葉県匝瑳郡野栄町)において、トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、関連機器等を事業費 5,327万円(国庫補助金 2,537万円)で導入。しかし、事業主体が補助金を他の用途に使用し、機器等の導入に係る代金を業者に全く支払わなかった為、請負契約が解除されシステムが稼働しないまま機器等が業者に撤去された。よって、国庫補助金 2,537万円が不当(無駄遣い)と指摘された件。
2.
平成17年度決算指摘事項
(1)
山形県豚肉トレーサビリティ協議会(山形県山形市)において、トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、関連機器等を事業費 1億2,096万円(国庫補助金 5,668万円)で導入。しかし、導入した機器等の一部しか設置しておらず、残りの機器等は、倉庫に保管されたままになっていた。また、生産履歴・加工流通情報の入力についても、豚肉加工食品に加工した豚11頭相当分について行っていたに過ぎず、その後、豚肉加工食品の販売不振などから、システムの運用を停止し、設置した機器等についても、ほとんどを撤去していた。よって、国庫補助金 5,668万円が不当(無駄遣い)と指摘された件。
(2)
金印グループトレーサビリティ導入委員会(東京都中央区)が、トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、関連機器等を事業費 2,636万円(国庫補助金 873万円)で導入。しかし、本システム導入後、同企業グループ内にて開発する販売・生産管理システムと上記システムを連携させることとしたため、運用開始を延期したが、同グループの販売・生産管理システムの開発目途が立たず、税金にて導入したシステムの運用が停止されたままになっていた。よって、国庫補助金 873万円が不当(無駄遣い)と指摘された件。
(3)
安心フードネット協議会(東京都千代田区)が、トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、関連機器等を事業費 393万円(国庫補助金 149万円)で導入。しかし、同協議会において、システム導入当初より米の取引価格等について構成員相互間で調整がつかなかったことから、16年度にシステムの運用を停止しており、導入した機器等は使用されておらず、また、同協議会の活動も停止していた。よって国庫補助金 149万円が不当(無駄遣い)と指摘された件。
3.
平成18年度決算指摘事項
(1)
東日本ユビキタストレーサビリティ推進協議会(山形県東置賜郡高畠町)が、トレーサビリティシステム導入促進対策事業の実施に当たり、関連機器等を事業費 4億9,006万円(国庫補助金 2億4,354万円)で導入。しかし、生産者の出荷拠点18箇所に置かれるはずであった端末装置が4箇所にしか設置されず、また、加工流通・販売業者二者にいたっては実際には補助事業に参加しておらず、業者の配送センター等には端末装置が全く設置されていなかった。そして、設置されなかった端末装置は梱包されたまま倉庫に保管され、或いは所在不明となっていた等ずさんな運用実態が明らかとなった。よって、国庫補助金 2億4,354万円が不当(無駄遣い)と指摘された件。
三 、
「トレーサビリティシステム導入促進対策事業」により、導入された機器等の利用状況が、次のように、低位にとどまっている場合がある。この原因・背景について農林水産省はどう認識しているか。また、今後これらの機器を有効に活用していくために、どのような具体的な対策を講じていくつもりか。
(平成15年度実施事業)
出荷量の実績/出荷予定数量ベースで、機器の利用状況が50パーセントを切るものが、16年度において30パーセント、17年度事業において17パーセント。利用者数の実績/利用予定者数ベースで、同じく機器の利用状況が50パーセントを切るものが、16年度において20パーセント、17年度において17 パーセント。
(平成16年度実施事業)
出荷量の実績/出荷予定数量ベースで、機器の利用状況が50パーセントを切るものが、17年度において26パーセント。利用者数の実績/利用予定者数ベースで、同じく機器の利用状況が50パーセントを切るものが、17年度において20パーセント。
右質問する。
食の安全・安心のためのトレーサビリティシステムに関する質問主意書に対する 答弁書
内閣衆質169 第199号
平成20年3月28日
内閣総理大臣 福田康夫
衆議院議長 河野洋平
衆議院議員江田憲司君提出
食の安全・安心のためのトレーサビリティシステムに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
食の安全・安心のためのトレーサビリティシステムに関する質問に対する答弁書
一の1について
「トレーサビリティシステム導入促進対策事業」については、平成15年度及び平成16年度において補助事業として実施した後、平成17年度には食の安全・安心確保交付金のうちの事業内容の一つとして実施したものである。
一の2について
当該事業の対象となっている食品は、牛の固体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法(平成15年法律第72号)第2条第3項の特定牛肉を除くすべての食品であり、加工食品も含まれる。
一の3について
お尋ねの食品の数を正確にお答えすることは、作業が膨大となるため困難であるが、当該事業は、平成15年度から平成17年度までの間、食品である農産物、畜産物、水産物及び加工食品を対象に合計257地区において実施され、現在、そのうち251地区において当該事業により導入された機器等が利用されている。
二について
農林水産省としては、補助金の適正な実施のため、補助金事業者である都県に対し、適切な対応を求めた結果、御指摘のそれぞれの国庫補助金については、これまでにそれらの全額が国庫に返還されたところである。
三について
当該事業により導入された機器等の利用状況が低位にとどまっている事案についてみると、その原因や背景は当該事案の状況により様々であるが、当該事業により導入された機器等を有効に活用していくため、当該事案に係る事業実施主体に対しては改善計画の提出を求めるとともに、その実施状況を点検しているところである。
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