自衛隊補給艦「ときわ」から間接給油を受けた後の米空母「キティホーク」の行動に関する質問主意書
米国防総省や衆院予算委員会(2007年10月10日。以下「委員会」という。)での石破防衛大臣の答弁によれば、2003年2月25日に海自の「ときわ」から米補給艦ペコスに補給された燃料は80万ガロンで、ペコスはその後67万5千ガロンをキティホークに給油したが、そのすべてが「ときわ」から補給された分だったと仮定しても、キティホークの当時の航行速度や作戦行動と照らし合わせると、3日間で消費し尽くす量だとした上で、キティホークはこの間、海上阻止活動のための監視などのOEF(不朽の自由作戦)に従事し、その後の同28日夜になって、ペルシャ湾北部で、イラク南部の飛行禁止区域を監視する「南方監視作戦(OSW)」の支援活動に入ったという。よって以下質問する。
一 、
米国防総省は、キティホークがペルシャ湾北部でイラク南部の飛行禁止区域を監視する「南方監視作戦(OSW)」の支援活動に入ったのは、2003年2月28日夜としているのか。念のため確認する。
二 、
キティホークの一日の燃料消費量について、米国防総省は「67万5千ガロンは3日間で消費し尽くす量」としているが、
(1)
米国会計検査院の資料では、キティホークのような通常型空母の1日の標準的燃料消費量が約11.3万ガロン、キティホーク自身のホームページでは約15万ガロンとされていることとの整合性如何。前者なら
6日間分、後者でも4.5日分となり、米国の言う「南方監視作戦(OSW)」の支援活動にかかる。重大な点なので、米国に問いただした結果も含め、国民に納得のいく説明をされたい。
(2)
石破防衛大臣はこの点、キティホークの1日の標準的燃料消費量が
20万ガロンと委員会で答弁しているが、米国会計検査院やキティホーク自身の数字との整合性も問う。
三 、
委員会での石破防衛大臣の答弁によれば、ペコスからの給油を受けた後のキティホークでは、ペルシャ湾内で数回の飛行活動があった(ゆえに燃料消費量が増大した)という。これが正しいとすると、ホルムズ海峡をこえたペルシャ湾上でのキティホークから発進した艦載機が、イラン上空を飛ばず、引き返す形で、あるいは迂回する形で、アフガン作戦に従事したと考えるのは極めて不自然ではないか。軍事的には「南方監視作戦(OSW)」の支援活動に入ったと考えるのが自然なところ、あくまでもOEFに従事したというなら、国民が納得できる整合性ある説明をされたい。
四 、
石破防衛大臣の答弁によれば、米国防総省は、当時、キティホークは33ノットの高速航行で、かつ数回の飛行活動にも高速が必要であり、それで燃料消費量も上がった旨の説明をしているとのことだが、ホルムズ海峡は狭隘でタンカー等の艦船の往来が輻輳している中で、このような高速航行は不自然ではないか。また、空母艦載機は必ずしも高速航行でなくても発進できる。この点についての政府の見解如何。
五 、
仮に、33ノットの高速航行で通常より多く燃料消費が必要だったとしても、「ときわ」から間接給油された67万5千ガロンの油は、既にキティホークに存していた油と混ざっているのだから、その混ざった油のうち、間接給油分だけが3日間優先的に消費されたと考えるのは、まったく不自然で理屈に合わない。それでも3日間優先的に消費されたと主張するなら、キティホークの燃料消費メカニズムから、物理的化学的に合理的な説明をされたい。
六 、
仮に、米国防総省が主張するように、2003年2月25日から3日間、キティホークがOEFに従事したなら、なぜ、キティホークの艦長が書いた年次報告書にその記述がないのか。同公文書には、この2003年2月25日を含む「104日間連続(continuous)の、イラク自由作戦に従事する連合軍への支援」を行った旨の記述があるが、それと明らかに矛盾するのではないか。政府の見解如何。
七 、
2003年1月23日に横須賀港を出港したキティホークは、同2月6日「Ordered to Deploy」、すなわち、従事すべき任務の命令を受けている。あくまでもキティホークがOEFに従事したというなら、その命令書を米国から入手し国民に開示されたい。開示できないなら、その理由を述べよ。
右質問する。
自衛隊補給艦「ときわ」から間接給油を受けた後の米空母「キティホーク」の行動に関する質問主意書 に対する 答弁書
内閣衆質168第107号
平成19年10月19日
内閣総理大臣 福田康夫
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員江田憲司君提出
自衛隊補給艦「ときわ」から間接給油を受けた後の米空母「キティホーク」の行動に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
自衛隊補給艦「ときわ」から間接給油を受けた後の米空母「キティホーク」の行動に関する質問に対する答弁書
一について
米国国防省の説明によれば、米空母キティホークは、平成15年2月28日の夜、南方監視作戦を支援するためペルシャ湾北部に到着したとされているが、これは、同日の夜から直ちに米国空母キティホークが南方監視作戦に従事したことを意味するものではないことを米側に確認している。
二について
御指摘の「1日の標準的燃料消費量」がどのように算出されたのかについては、政府として確たることを承知しておらず、お尋ねについてお答えすることは困難である。なお、平成15年当時、米国空母キティホークの燃料消費量に関し、1日当たり約20万ガロンである旨を米側に確認しているところである。
三及び四について
米軍の運用に係る事項については、その詳細が明らかにされているものではないと承知しているが、米側は、平成15年2月25日から28日までの3日間について、米国空母キティホークが不朽の自由作戦を支援する任務を行ったことを公式に明らかにしている。一般に、陸上における作戦を支援するためにどのような場所に空母を展開させるかについては、その時々の作戦上の所要によるものと承知しており、また、米国空母キティホークがペルシャ湾で不朽の自由作戦を支援するために「海面捜索監視統制」その他の海上における任務を行ったことは、米側も公式に明らかにしているところであり、不朽の自由作戦に関して米国空母キティホークがペルシャ湾に展開したとしても不自然とは言えないと考えている。また、米国空母キティホークがホルムズ海峡を通過する際に33ノットの高速で相当の時間、航行していたことを含め、米国空母キティホークの航行速度については、米国空母キティホークの航海日誌に明記されている。御指摘の石破防衛大臣の答弁は、これらを踏まえてなされたものである。
五について
ご質問の趣旨が必ずしも明らかではないが、平成19年10月10日の衆議院予算委員会での石破防衛大臣の答弁は、我が国が米国補給艦に補給した燃料について、少なくとも補給相当分が平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国債連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年法律第113号)の趣旨に沿って適切に使用されている旨を答弁したものである。この点は、米側も、「補給艦ペコスがキティホークに給油した67万5000ガロンが直ちに使用されたと仮定する」と説明しているところである。
六について
御指摘の年次報告書の記述の趣旨について政府としてその詳細を承知していないが、一般に、年次報告書は、その艦船が一年間を通じて達成した任務を分かりやすく広報する目的で記述されるものであり、全ての任務や活動が網羅的かつ正確に記載されるというような正確のものではないと承知している。いずれにせよ、米側は、当該年次報告書の記述を承知した上で、平成15年2月25日から28日までについて、米空母キティホークが不朽の自由作戦を支援する任務を行ったことを公式に明らかにしているところである。
七について
一般に、米国は、米軍の作戦行動上の安全にかかわる文書については開示できないとの立場であると承知している。いずれにせよ、米側は、平成15年2月25 日から28日までについて、米国空母キティホークが不朽の自由作戦を支援する任務を行ったことを公式に明らかにしているところである。
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