自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する質問主意書
「不朽の自由作戦」における「海上阻止行動」を支援するため、これまでに自衛隊の補給艦が行った給油活動の実態につき、以下、質問する。
一 、
これまで自衛隊の補給艦が給油した回数(平成19年8月30日現在/
777回)それぞれについて、対象艦船の名称とその国籍、給油した時点、
地点をすべて明らかにされたい。
二 、
これまでに、自衛隊の補給艦が米国の「補給艦」に対し給油した油の総量如何。米国の補給艦以外の艦船に給油した油の総量も、あわせ明らかにされたい。
三 、
自衛隊の補給艦が給油した米国の「補給艦」が、その後、いつの時点で、どの艦船に給油したのか、日本政府は個別具体的に把握しているのか。
四 、
インド洋、アラビア海にとどまらず、ホルムズ海峡を越えたペルシャ湾内での、自衛隊の補給艦による給油実績はあるのか。あるなら、
(1)
回数、給油量、給油先艦船名、給油時点を、それぞれ明らかにされたい。
(2)
ペルシャ湾での自衛隊艦船の活動は、テロ特措法上、いかなる理由で正当化されるのか。
五 、
米海軍海上輸送団の機関誌『シーリフト』2003年6月号によれば、自衛隊の補給艦「ときわ」が、イラク開戦の日(2003年3月20日)に、「イラクの自由作戦」に参加中の米給油艦「ジョン・エリクソン」にペルシャ湾で給油しているとされる写真を掲載しているが、その真偽如何。
六 、
一部報道では、「米海軍第五空母群のマシュー・モフィット司令官は、キティホークの機動部隊がイラク戦争中、海上自衛隊から間接的に洋上で約80万ガロンの燃料補給を受けたことを報道陣に明らかにした。」(京都新聞
2003年5月6日)とされているが、この発言を日本政府として把握しているか。司令官の発言は、報道のとおりと理解して良いか。
七 、
一部報道では、「石川亨統幕議長は8日の記者会見で、イラク戦争に参加していた米空母「キティホーク」への間接的な燃料補給について「キティホークが2月25日に米補給艦から受給する前に、海上自衛隊はその米補給艦に補給している」と述べ、可能性を認めた。」(日本経済新聞2003年5月9日)とされているが、この発言を日本政府として把握しているか。当時の統幕議長の発言は、報道のとおりと理解して良いか。
右質問する。
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する質問主意書に対する 答弁書
内閣衆質168 第37号
平成19年10月2日
内閣総理大臣 福田康夫
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員江田憲司君提出
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する質問に対する答弁書
一及び四について
お尋ねの給油実績については、これを明らかにした場合、自衛隊及び諸外国の軍隊等の運用に支障を及ぼすおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
その上で、一般論として申し上げれば、平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年法律113号。以下「テロ対策特措法」という。)に基づく対応措置(以下「対応措置」という。)は、テロ対策特措法第2条第3項の規定により、我が国領域及び現に戦闘行為(国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。以下同じ。)が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)及びその上空並びに外国の領域(当該対応措置が行われることについて当該外国の同意がある場合に限る。)において実施するものとされていることを除くほかは、テロ対策特措法に、対応措置を実施する区域を地理的に限定する規定は設けられていない。
なお、対応措置に関する基本計画においては、テロ対策特措法に基づく協力支援活動として補給を行う区域の範囲として、ペルシャ湾を含めているところである。
二について
平成13年12月2日から平成19年8月31日までの間に、テロ対策特措法に基づく協力支援活動として我が国の補給艦が米国の艦船へ提供した艦船用燃料は約38万5000キロリットルであり、そのうち艦船用燃料の補給を主たる任務とする補給艦へ提供したものは、約23万6700キロリットルである。
三について
我が国がテロ対策特措法に基づく協力支援活動として補給を行った諸外国の軍隊等の艦船がその補給を受けた後に従事する活動の内容は、我が国がテロ対策特措法に基づいて補給を行った趣旨を踏まえて各国が決定するものであり、政府としてはその詳細を承知する立場にない。その上で申し上げれば、我が国がテロ対策特措法に基づく協力支援活動として行う補給は、テロ対策特措法に基づくものであることを当該補給の対象国との間の交換公文に明記するとともに、当該対象国との協議の場においてテロ対策特措法の趣旨について説明した上で、当該対象国の艦船への補給の都度、当該艦船がテロ対策特措法に規定する諸外国の軍隊等の活動に従事していることを確認した後に行っているものであり、我が国が補給した艦船用燃料等については、テロ対策特措法の趣旨に沿って適切に使用されているものと認識している。
五について
お尋ねの「シーリフト」に掲載された内容について、政府としてお答えする立場にないが、いずれにせよ、特定の補給に係る内容については、これを明らかにした場合、自衛隊及び諸外国の軍隊等の運用に支障を及ぼすおそれがあることから、答弁を差し控えたい。
六について
御指摘の発言については、平成15年5月、米側に対して確認したところ、モフィット司令官の意図は、不朽の自由作戦に対する海上自衛隊からの艦船用燃料の提供について感謝することであったことは明らかである旨及びこれまで米国政府と米海軍は、海上自衛隊から提供を受けた燃料についてテロ対策特措法の趣旨と目的に外れて使用されたことはなく、今後も使用することはあり得ない旨の回答を得ている。
七について
平成15年5月8日の記者会見において、統合幕僚会議議長は、米空母キティーホークが不朽の自由作戦に従事中の同年二月25日に米補給艦から燃料の提供を受けた旨及び同日に海上自衛隊補給艦が当該米補給艦に燃料提供を実施した旨を述べた。
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する再質問主意書
先に提出した、「自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する質問主意書」(以下「主意書」という。)に対する答弁書(以下「答弁書」という。)を踏まえ、以下の点につき、再度質問する。
一 、
答弁書一及び四について
(1)
答弁書一及び四において「お尋ねの給油実績については、これを明らかにした場合、自衛隊及び諸外国の軍隊等の運用に支障を及ぼすおそれがあることから、答弁を差し控えたい」とのことだが、具体的に問題点や疑惑を指摘された給油案件についても、今後とも一切、その実態を明らかにしないというのが政府の姿勢と理解してよいか。
(2)
米海軍では、NPO法人「ピースデポ」が入手したように、海軍歴史センター(ワシントン)において、かなり最近の個別艦船の航海日誌までが公開されている。なぜ、直接的な軍事行動に携わっている米海軍には公開できて、後方支援たる自衛隊の補給艦の過去の給油活動が、「これを明らかにした場合、自衛隊及び諸外国の軍隊等の運用に支障を及ぼすおそれがある」として公開できないのか。国民に納得のいく説明をされたい。
(3)
「航泊日誌に関する達」(昭和42年5月30日海上自衛隊達第三十号)によれば、「航泊日誌は、最後の記載をした日から一年間艦船内に備え置き、その後三年間当該艦船の在籍する地方総監部に保存するものとする」(第七条)とされている。この内規によれば、イラク開戦前後(03年2月から4月)にインド洋上他近隣海域に派遣された自衛隊艦船の航泊日誌は廃棄される可能性がある。当時の給油活動にこれだけの疑惑が指摘されている以上、政府において早急に保全措置をとられたい。既に廃棄したなら、その正確な年月日を示されたい。
二 、
答弁書二及び三について
(1)
答弁書三において「我が国がテロ対策特措法に基づく協力支援活動として補給を行った諸外国の軍隊等の艦船がその補給を受けた後に従事する活動の内容は、我が国がテロ対策特措法に基づいて補給を行った趣旨を踏まえて各国が決定するものであり、政府としてはその詳細を承知する立場にない。」とのことだが、答弁書二により、我が国が米国の補給艦に提供した給油量は、米国の艦船に提供した総量の六割以上にも及んでいる現状に鑑みれば、我が国の補給艦から他国の補給艦に補給された艦船用燃料が、その後、どの艦船に補給され、どのような作戦に従事したのかについて、実態把握を行うのは当然ではないか。政府の見解如何。
(2)
答弁書三において、「その詳細を承知する立場にない」としながら、「当該対象国の艦船への補給の都度、当該艦船がテロ対策特措法に規定する諸外国の軍隊等の活動に従事していることを確認した後に行っている」とのことであるが、それでは、具体的にどのような確認(誰から誰へ、文書か口頭か、確認手法、記録管理・保存等)を行ってきたのか。
三 、
答弁書五について
(1)
答弁書五において、「お尋ねの「シーリフト」に掲載された内容について、政府としてお答えする立場にない」「答弁を差し控えたい」とのことであるが、2003年7月18日に行われた衆議院イラク人道復興支援並びに国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動等に関する特別委員会において、当時の石破茂防衛庁長官は、当該「シーリフト」に掲載された米給油艦「ジョン・エリクソン」に係る質問に対し、「私どもが法に反した給油を行っておるという事実はございませんし、ペルシャ湾でこのような給油を行ったということもございません。」との答弁を行っている。にもかかわらず、今回の答弁書において、「政府としてお答えする立場にない」と答弁を拒否する理由如何。
(2)
米給油艦「ジョン・エリクソン」については、米海軍「シーリフト」のホームページにおいて「エリクソンは、2002年9月に開始された任務(7か月、204日間)中、不朽の自由作戦とイラクの自由作戦を支援するため、195回の補給を行った。これには、米艦船や連合国艦船への
3800万ガロンの油の提供と3700パレットの積み荷の移転が含まれる」とされている。このように、米軍が明確にエリクソンのイラク、アフガン両作戦への従事を認め、かつ、イラク戦争開戦前後(2003年3月)に補給艦「ときわ」が「エリクソン」に油を提供したとしている以上、政府があくまでも、「ときわ」の油が「イラクの自由作戦」に使用されていないというなら、「キティホークへの間接補給疑惑」と同様、米国に照会し、その結果を国民の前に明らかにすべきではないか。
右質問する。
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する再質問主意書に対する 答弁書
内閣衆質168第89号
平成19年10月16日
内閣総理大臣 福田康夫
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員江田憲司君提出
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
自衛隊の補給艦による給油の実態解明に関する再質問に対する答弁書
一の(1)及び(2)、並びに二の(1)について
我が国が平成13年9月11日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国債連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議に基づく人道的措置に関する特別措置法(平成13年法律第113号。以下「テロ対策特措法」という。)に基づいて諸外国の軍隊等の艦船に補給を行った場合において、当該諸外国が個別の補給に係る情報をどのように公開しているかについて、政府としてその逐一を承知していないが、一般的には、関係する部隊等の安全や円滑な活動の確保に支障をきたす可能性、関係国との信頼関係を損なう可能性等を考慮し、公開の可否が判断されるものであると理解している。いずれにせよ、政府としては、テロ対策特措法に基づく海上自衛隊の活動内容について、各国の理解も得ながら可能な限り情報を開示してきているところであり、国民の広い理解が得られるよう引き続き努めてまいりたい。
一の(3)について
平成15年2月から同年4月までにテロ対策特措法に基づきインド洋に派遣された海上自衛隊艦船の当該期間に係る航泊日誌については、すべて現存している。
二の(2)について
テロ対策特措法に基づく協力支援活動に関する連絡調整等を実施するためにバーレーンに派遣されている海上自衛隊員が、他国の連絡官等と文書等により連絡調整を行い、当該艦船がテロ対策特措法に規定する諸外国の軍隊等の活動に従事していることを確認している。
三について
先の答弁書(平成19年10月2日内閣衆質168第37号)五についてでは、外国の機関誌に掲載された写真の真偽についてのお尋ねに対し、政府としてお答えする立場にないと述べたものであるが、我が国は、テロ対策特措法に基づいて補給を行った艦船がテロ対策特措法に規定する諸外国の軍隊等の活動に従事していることを確認するために必要な範囲で情報を得ているところであり、御指摘の当時の石破防衛庁長官の答弁は、当該情報を踏まえてなされたものである。いずれにせよ、政府としては、テロ対策特措法に基づく海上自衛隊の活動内容について、各国の理解も得ながら可能な限り情報を開示してきているところであり、国民の広い理解が得られるよう引き続き努めてまいりたい。
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