「宙に浮いた年金記録」と社会保険オンラインシステムに関する
質問主意書
社会保険オンラインシステムの老朽化、それに起因する非効率性、高コスト性等が、現在行われている「宙に浮いた年金記録」の確認、突合作業等に深刻な影響を及ぼす可能性があるとの問題意識から、以下、質問する。
一 、
先に提出した、「いわゆる「宙に浮いた年金記録」の確認作業に関する質問主意書」に対する答弁書5について
(1)
答弁書は「社会保険オンラインシステムについては、同システムの全面的な見直しを必要とすることから二十四時間稼働可能なシステムに移行することは困難である」としているが、なぜ二十四時間稼働が全面的な見直しになるのか、具体的にわかりやすく説明されたい。
(2)
社会保険庁は、平成十七年三月に「社会保険オンラインシステム刷新可能性調査」の結果をとりまとめ公表したが、それによると、平成十七年度末までに業務・システムに係る最適化計画を策定し、平成十八年度から十九年度にかけて実施するとされている。実際に採用されたシステムの最適化の対策とその具体的な進捗状況如何。
(3)
「社会保険オンラインシステム刷新可能性調査」は、最適化により、年間、運用費が最大約五百二十億円削減できるとの提言をしているが、2で実際に実施されている最適化で年間どの程度のコスト削減を見込んでいるのか。
(4)
2の最適化と、現在行っている「宙に浮いた年金記録」の確認、突合作業(システム開発を含む)との関係如何。その最適化がどのように役立っているのか、あるいは関係ないのか。
(5)
現在のシステムは、いわゆる旧式(レガシーシステム)と呼ばれるものと理解しているが、これがシステムの非効率性、高コスト性等の原因となっている。このシステムの全面的な見直しを行う考えはないのか。
二 、
現在の社会保険オンラインシステムには、現在の高井戸、三鷹の庁舎に存するシステムの、遠隔地でのバックアップ機が存在せず、また、そのデータについても遠隔地でのバックアップシステムが存在していないという指摘があるが事実か。事実なら、火災や地震等で高井戸、三鷹の庁舎が被災すると、その保有するデータが全部消失する危険性があり、「宙に浮いた(消えた)年金記録」以上に深刻な問題を来たすのではないか。
三 、
社会保険庁には、これらシステム全体を統括し、管理し、企画を行う部署があるのか。それとも、すべてNTTデータ、日立等への外部委託なのか。
四 、
社会保険庁には、常勤のシステムエンジニアが何人いるのか。そのうち、民間会社出身ではない、社会保険庁プロパーの職員は何人か。
五 、
社会保険庁は、年間、一千億円を超えるシステム関係費を支出しており、民間の金融機関のそれと比べて、数倍のコスト構造となっているとの指摘がある。その背景としては、社会保険庁にシステム全体を理解する部署や職員がいないこと、それをいいことに、システムの受託会社の「言い値」のシステム開発、維持・管理を許してしまっているからとの指摘もある。この点についての政府の認識如何。今後、受託会社との契約見直しを含め、どのような改善策を講じていくつもりか。
右質問する。
「宙に浮いた年金記録」と社会保険オンラインシステムに関する
質問主意書に対する答弁書
内閣衆質166 第424号
平成19年7月6日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員江田憲司君提出
「宙に浮いた年金記録」と社会保険オンラインシステムに関する質問に対し、
別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
「宙に浮いた年金記録」と社会保険オンラインシステムに関する質問
に対する答弁書
一の(1)について
社会保険オンラインシステム(厚生年金保険及び国民年金等の適用、保険料の徴収、給付並びに年金相談等に使用するコンピュータシステムをいう。以下同じ。)については、現在、被保険者や受給権者等の記録照会や更新情報の入力等(以下「オンライン処理」という。)と、オンライン処理以外で使用する他のデータベースへの当該更新情報の記録とが同時に実施できないシステムとなっており、オンライン処理の稼働時間終了後に1日ごとに社会保険オンラインシステムを停止して、当該更新情報の記録を行っているところである。
このため、現行の社会保険オンラインシステムの24時間稼働可能なシステムへの移行には、システムの全面的な見直しが必要となるものと考えている。
一の(2)について
社会保険庁においては、平成18年3月に策定された社会保険業務の業務・システム最適化計画(以下「最適化計画」という。)に基づき、平成18年度から平成22年までの5年間に、記録管理システム及び基礎年金番号管理システムのオープン化、ハードウェア資源の集約及び有効活動、データセンターの統合等を内容とする新たな記録管理システム及び基礎年金番号管理システム(以下「刷新システム」という。)を構築することとしており、平成19年3月に基本設計書の作成を行ったところである。
一の(3)について
社会保険オンラインシステムの運用経費については、最適化計画において、刷新システムのオープン化等により、平成17年度予算と比較して、平成23年度に年間約300億円の削減を見込んでいるところである。
一の(4)について
一の(2)についてで述べたとおり最適化計画に基づき構築する刷新システムは平成22年度に完成する予定であるが、この刷新システムと御指摘の「確認」及び「突合作業」とは、関係ない。なお、国民年金又は厚生年金保険の受給権者又は被保険者に係る記録及び基礎年金番号が付されていない又は基礎年金番号に統合されていない年金手帳記号番号の記録の名寄せについては、平成19年7月5日に年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会において取りまとめた「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」に基づき、平成20年3月までを目途に行うこととしている。
一の(5)について
一の(2)についてで述べたとおり、社会保険オンラインシステムのうち、記録管理システム及び基礎年金番号管理システムについては、最適化計画に基づき、刷新システムを構築することとしているところである。
また、年金給付システムについては、最適化計画に基づき、「最適化の第二段階としてオープン化する」こととしているところである。
二について
社会保険オンラインシステムは、被災等の際に代替可能なシステムを有していないが、被災等による被保険者や受給権者等の記録の滅失を防ぐため、オンライン処理の稼働時間終了後にバックアップデータを作成し、遠隔地に保管している。このため、御指摘のような保有するデータが全部消失する危険性はないと認識している。
三について
お尋ねについては、社会保険オンラインシステムの日々の運用管理については社会保険庁社会保険業務センター総務部が行い、社会保険オンラインシステムの総合的な企画については社会保険庁運営部企画課が行っているところである。
また、刷新システムの構築に当たり、刷新システムの検討を行うプロジェクトチームを設けているところである。
なお、社会保険オンラインシステム及び刷新システムのシステムの設計等に当たっては、日本アイ・ビー・エム株式会社が社会保険庁に対する技術的な支援及び工程管理業務を行っている。
四について
社会保険庁においては「システムエンジニア」として採用した者はいない。
なお、平成18年度において、第一種情報処理技術者の資格などを有する者を4人採用したほか、システムの開発に携わる職員の能力向上に資するため、スキル育成事業を実施しているところである。
五について
社会保険オンラインシステムについては、いわゆるレガシーシステムであるとの指摘もあったため、一の2についてで述べたとおり、平成18年3月に最適化計画を策定し、平成18年度から平成22年度までの5年間に刷新システムを構築することとしているところであるが、刷新システムについては、ソフトウェア及びハードウェアの一般競争入札による調達の実施、汎用パッケージソフトウェアの活用等を図ることとしている。
また、現行の社会保険オンラインシステムのソフトウェア及びハードウェアの調達に関しては、民間の専門知識を持つ者の知見を得つつ、その必要性及び妥当性についての検証やコスト全般についての精査を行うとともに、平成19年度においては、契約の透明性確保の観点から記録管理システム等の契約の見直しを行ったところである。
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