コムスン問題で露呈した介護の実態とその改善策に関する質問主意書
コムスンの介護報酬請求に係る不正発覚等に伴い、介護の実態、その在り方等が大きな社会問題となっている。よって以下質問する。
一 、
今回の一連の事態を通じて、現在の介護保険制度を前提とすれば、「訪問介護はペイしない」「訪問介護の報酬だけでは企業として成り立たない」等の意見が出されているが、厚生労働省として、どう認識しているか。特に、昨年の軽度者に対する介護報酬引き下げにより、その傾向がより顕著になったとの指摘もあるが見解如何。
二 、
厚生労働省による「平成17年介護サービス施設・事業所調査結果速報」によると、訪問介護の利用者は1,097,769人となっており、前年に比べ125,503人増加している。対して、財団法人介護労働安定センターによる「事業所における介護労働実態調査」(平成18年6月実施)によると、平成
17年11月現在の訪問介護員の従業員数は22,829人であり、前年に比べ1,005人の増加にとどまっているとのことである。
これらの統計によれば、訪問介護員一人当たりの利用者数は、平成16年の44.55人から平成17年には48.09人へと、この一年で約3.5人強増加し、訪問介護員の負担が増大していることが推察されるが、近年このように訪問介護員の負担が増加していることにつき、その事実認識如何。また、その原因、背景等について、政府としてどのように分析しているか。
三 、
本年6月8日に閣議決定された「高齢社会白書」によれば、2012年には高齢者人口が3千万人を超え、2055年には高齢化率が40.5%に達し、国民の2.5人に1人が高齢者という「前例のない高齢社会」が到来すると予想されている。
一方、平成16年10月からの一年間において、訪問介護員の離職率は
17.7パーセントであり、全体としての増加率は4.6パーセントに止まっている。今後、超高齢社会の到来に対応するため、訪問介護員の増員等訪問介護の充実・拡充のため、政府としてはどのような施策を考えているのか。
四 、
今回のコムスン問題に関連して、現場の声や報道等で、訪問介護員の「拘束時間の長さ」「業務の過酷さ」、そしてそれに比して「給与が低い」との悲鳴にも似た声が多数紹介されている。
(1)
訪問介護員の給与や勤務状況を含めた待遇の実態を政府はどの程度把握しているのか。把握しているのであれば、その給与水準、勤務状況の実態を数字で明らかにされたい。
(2)
その過酷な勤務実態に対し、介護保険制度による介護報酬は適切であると考えているのか。適切でないとするならば、どのように改善すべきと考えているのか、見解如何。
五 、
今回のコムスンの事業譲渡をめぐり、譲渡を受けることは可能でも、今までコムスンが行ってきた24時間対応の訪問介護事業の継続は難しいとの見解を示す事業者が多いと聞く。現実問題として深夜の介護を必要としている要介護者が多いことにかんがみれば、24時間介護の実施が可能となる制度設計を行う必要があると考えるが、その意思はあるのか。また実際どのような制度設計を行っていくつもりか。
右質問する。
コムスン問題で露呈した介護の実態とその改善策に関する質問主意書に対する 答弁書
内閣衆質166第409号
平成19年6月29日
内閣総理大臣 安倍晋三
衆議院議長 河野洋平殿
衆議院議員江田憲司君提出
コムスン問題で露呈した介護の実態とその改善策に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
コムスン問題で露呈した介護の実態とその改善策に関する質問に対する
答弁書
一について
介護報酬は、一定のサービスの質を確保する観点から、介護サービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定することとしており、平成18年4月の介護報酬の改定についても、厚生労働省の実施した「介護事業経営実態調査」の結果等を踏まえ、釈迦保障審議会介護給付分科会において議論の上、これを行ったものであり、適切であると考えているが、同改定の影響については、本年
10月に実施する「介護事業経営概況調査」の中で、把握して参りたい。
二について
厚生労働省の実施した「介護サービス施設・事業所調査」によると、訪問介護事業所の訪問介護員の従事者の1人当たり利用者数は、平成16年は約2.74人、平成17年は約2.72人であり、また常勤換算従事者の1人当たり利用者数は、平成16年は約6.34人、平成17年は約6.22人となっている。いずれも訪問介護員1人当たりの利用者数は減少しており、これらの調査結果を見ると限り、訪問介護員の負担が増加しているとは一概には言えない。
なお、御指摘の訪問介護員1人当たりの利用者数は全数調査である「介護サービス施設・事業所調査」に基づく訪問介護の利用者総数と抽出調査である「事業所における介護労働実態調査」に基づく訪問介護員の数を基に計算されたものと考えられ、これに基づく分析は適当でないと考えている。
三について
厚生労働省においては、「社会福祉事業に従事する者の確保を図るための措置に関する基本的な指針」(平成5年厚生省告示第116号)を踏まえ、訪問介護員を含む社会福祉事業従事者について、処遇の充実、養成確保及び資質の向上、就業の促進及び定着化、社会手企業化の向上等のための様々な取組を行ってきているところであり、例えば、平成18年4月の介護報酬の改定において、訪問介護員等(介護福祉士または介護保険法施行令(平成10年政令第
142号)第3条に規定する養成研修修了者をいう。)のうち介護福祉士を一定割合以上配置する等の要件を満たし、質の高い人材確保を図っている事業所に対する「特定事業所加算」を創設したほか、介護職員の資質向上を図るため、同月より介護職員基礎件数を実施しているところである。
また、介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成4年法律第63号)に基づき、雇用管理に関する相談や情報提供等事業主の雇用管理改善に向けた自主的な取組に対する支援を実施している。
さらに、介護福祉士等の資質の確保及び向上を図るため、介護福祉士等の資格の取得方法の見直し等を内容とする社会福祉士及び介護福祉士等の一部を改正する法律案を今国会に提出したところである。
四の(1)について
厚生労働省の実施した「平成18年賃金構造基本調査」によれば、「ホームヘルパー」の「きまって支給する現金給与額」は1月当たり20万2100円、「所定内実労働時間数」は1月当たり164時間、「超過労働時間数」は1月当たり8時間、「勤続年数」は4.4年となっている。
四の(2)について
訪問介護員の労働条件については、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の関係法令に基づき、訪問介護事業所と訪問介護員との契約で決められるものであり、その契約内容に応じて訪問介護員の勤務実態も様々であると考えられるが、一についてで述べたとおり、介護報酬は、一定のサービスの質を確保する観点から、介護サービスに要する平均的な費用の額を勘案して設定することとしており、平成18年4月の介護報酬の改定についても、厚生労働省の実施した「介護事業経営実態調査」の結果等を踏まえ、社会保障審議会介護給付費分科会において議論の上、これを行ったものであり、適切であると考えている。
五について
厚生労働省としては、御指摘の24時間の訪問介護について、介護保険発足時から夜間等の指定訪問介護に対する介護報酬の加算を行っており、また、平成18年4月には、地域密着型サービスとして、夜間の定期的な巡回訪問又は利用者等からの通報により介護福祉士等が入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を居宅において行う夜間対応型訪問介護を創設する等、24時間の介護が必要となる方に対する施策の充実に努めているところである。
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.