国家公務員の一括採用、一括管理システム、天下り等に関する質問主意書
公務員制度改革の一環として、以下の課題について質問する。
一 、
「人材の一括管理システムの導入」についての現在の検討状況及び進捗如何。いつまでに実現するのか。また、政府内の担当部署はどこか。
(参考)
・ 行政改革会議最終報告(平成9年12月3日)
Ⅴ 公務員制度の改革
2 主要な改革の視点と方向
(2) 新たな人材の一括管理システムの導入
省庁再編の機会をとらえ、基本的には人材の一括管理の方向に向けて
踏み出すこととすべきである。
(1) 事務系、技術系を問わず、課長など一定の職以上の職員について、
政府全体として一括管理を行うべきである。
(2) 一括管理の在り方については、当面、公務員制度調査会の意見(平成
9年11月11日)に従い、大括り省庁内における人材管理の一括化、
人材情報の総合的管理、幹部職員昇任等に関する政府における総合調
整、幹部職員等の計画的育成、省庁間移籍制度の新設、人事交流の一
層の推進、退職後の人材活用システムの検討等を具体的に進めるべき
である。
・ 中央省庁等改革基本法(平成10年6月12日法律第103号)
第5章 関連諸制度の改革との連携
第48条 政府は、中央省庁等改革が行政の組織及び運営を担う国家公
務員に係る制度の改革を併せて推進することにより達成されるものであること
にかんがみ、(中略)人材の一括管理のための仕組みの導入(中略)につい
て、早期に具体的成果を得るよう、引き続き検討を行うものとする。
・ 中央省庁等改革の推進に関する方針(平成11年4月27日・中央省庁等
改革推進本部決定)
政府全体としての適材適所の人材活用を進めるため、本府省課長級以上の
幹部職員及び課長に準ずる幹部要員の人材情報についての総合的な管理シ
ステムである人材情報データベースを構築し、内閣官房及び各府省における
人材登用、府省間人事交流の推進などに活用する。(中略)また、新たな府省
内における人材管理の一括化(中略)等の措置について、その着実な推進を
図る。
二 、
また、前掲の行政改革会議最終報告では、人材の「一括採用」について、一括管理システムの検討状況をも踏まえ、引き続き検討を進める必要があるとされているが、現在の検討状況如何。また、「一括採用」される国家公務員の範囲如何。
三 、
「公務員制度改革大綱」(平成13年12月25日閣議決定)では、「Ⅱ 新たな公務員制度の概要」として、「新人事制度の構築」が決定されている。そこでは、「新たに能力等級制度を導入」し、「能力や業績を適正に評価した上で、真に能力本位で適材適所の人事配置を推進する」とされている。ただ、この「能力」「業績」を、誰が、どのような基準で評価するかで、まったく異なる人事制度となりうる。そこで質問する。
(1)
誰が評価するのか。当該府省庁の人事担当か、所属課の課長か、あるいは当該府省庁外の第三者か。一、二との関連で、「人材の一括管理システム」「一括採用」が導入された場合、政府内のどの部署の誰が評価するのか。
(2)
どのような基準で評価するのか。これまで通り、いかに多くの予算を獲得し、新しい政策を立案し、法律を通したか等で判断するのか、それとも、税金の無駄遣いを改め、関連部署を廃止し、人員を削減したかで判断するのか。その評価基準は誰にもわかる形で明示的に策定されるのか。
四 、
先に提出した私の「官僚の天下り禁止に関する質問主意書」に対する政府の答弁書(内閣衆質164第283号)では、「各府省における国家公務員の再就職のあっせん、仲介等」を「企業、団体等からの要請に基づき職員に当該企業、団体等を再就職先として紹介すること等各府省がその職員の再就職について何らかの関与をすることをいう」と認識しているが、「企業、団体等からの要請」がない場合にも、各府省において「あっせん、仲介等」を行う天下りがあることを認めるか。
五 、
憲法第22条第一項が保障する「職業選択の自由」とは、前掲の答弁書では「自己の従事する職業を選択し、その職業を遂行する自由」をいうとされている。その当然の前提として、それは当該人の「自由な環境の下での自発的な意思」で「選択」「遂行」できる自由と考えて良いか。
六 、
前掲の答弁書では「あっせん、仲介等による国家公務員の再就職を禁止することは、職業選択の自由との関係や職員が在職中に培った経験や能力の有効な活用等の観点を考慮し、慎重に検討する必要がある」とされているが、「企業、団体等からの要請」がないのに、各府省から「天下りの受入を要請」し、結果的に「企業、団体等の承諾」を得て行われる天下りを禁止することまで、「職業選択の自由」に反すると考えるか。
真の意味で、退職する当該官僚の意思と、受け入れ先の企業、団体等の意思が個別に合致して転職する場合を許容すれば、少なくとも「職業選択の自由」に反することはないと考えるが、政府の見解如何。
七 、
前掲「公務員制度改革大綱」を受けて国会に提出されることになっている法案の現状、検討状況如何。いつ、どういう形で国会へ提出されるのか。
右質問する。
国家公務員の一括採用、一括管理システム、天下り等に関する質問主意書 に対する 答弁書
内閣衆質164号325号
平成18年6月20日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 河野洋平
衆議院議員江田憲司君提出
国家公務員の一括採用、一括管理システム、天下り等に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員江田憲司君提出
国家公務員の一括採用、一括管理システム、天下り等に関する質問に対する答弁書
一について
御指摘の「人材の一括管理システムの導入」については、これまで、各府省における中央省庁再編の趣旨を踏まえた統合府省内の人事交流及び府省間の人事交流の実施、総務省における本府省課長級以上の幹部職員等の人材情報の総合的な管理システムである人材情報データベースの構築及び運用、内閣官房及び総務省における国家公務員の再就職を支援する仕組みである人材バンクの円滑な導入に資するための試行等の取組を行ってきたところである。
今後、内閣官房、総務省等において、関係府省の協力を得つつ、引き続き検討を進めることとしているが、現時点で「人材の一括管理システムの導入」の具体的な期限をお示しすることは困難である。
二について
御指摘の「一括採用」については、各府省ごとにその行政分野に応じて必要とされる人材が必ずしも同一ではないこと、特定の行政分野に携わることに意欲を有する有為な人材の確保が困難になること等の問題があり、その対象とする範囲を含め、幅広い検討が必要であると考えている。
三について
公務員制度改革については、職員の意欲と仕事の成果を引き出すような能力・実績主義の人事管理を徹底することが必要であると考えている。
現在、職員の職務遂行能力、勤務実績をできる限り客観的に把握するための新たな人事評価の第一次試行を実施しているところであり、新たな人事評価における評価者、評価項目、評価基準等については、試行の結果や公務員の人事管理の在り方についての議論を踏まえつつ、検討してまいりたい。
四について
各府省における国家公務員の再就職のあっせん、仲介等については、一般に、個別の企業、団体等からの要請や照会等に応じて行われるものと認識しており、衆議院議員長妻昭君提出天下りあっ旋に関する質問に対する答弁書(平成16年8月31日内閣衆質159第117号)二についておいて述べたとおり、各府省において平成11年から15年までの5年間に要請等がないにもかかわらず企業、団体等に職員の再就職の受入れを要請した事例として確認されたものはない。
平成16年以降の国家公務員の再就職のあっせん、仲介等であって、企業、団体等に職員の再就職の受入れを要請したものの有無については、調査を行うことは膨大な作業を要することから、お答えすることは困難である。
五について
お尋ねの「当該人の「自由な環境の下での自発的な意思」」の意味が必ずしも明らかではないが、憲法22条第1項が保障する「職業選択の自由」とは、自己の従事する職業を選択し、その職業を遂行する自由を意味することは先の答弁書(平成18年6月6日内閣衆質164第283号)で述べたとおりであり、具体的には、各人が任意に自己の職業を選択し、その職業を遂行することを公権力が妨げないことによって保障されるものと一般に解されている
六について
企業、団体等からの要請がないにもかかわらず各府省が退職した国家公務員の受入れを企業・団体等に要請することを禁止することは、職業選択の自由にかかわる問題ではないと考える。
七について
公務員制度改革については、能力・実績主義の人事管理の徹底と退職管理の適正化等について、人事評価の試行の取組状況等を見ながら関係者との調整を進め、できる限り早期に具体化を図ってまいりたい。
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