平成十八年二月三日、参議院本会議で可決・成立した「国会議員互助年金法を廃止する法律案」(宮路和明君外六名提出)は、見かけ上「議員年金廃止」をうたってはいるものの、今後も議員年金が継続する「偽装廃止法」である。 よって、以下質問する。
一 、
本法律は、議員立法であるため、議院法制局の審査を経たものと思われるが、「国会議員互助年金」制度自体は形式的に廃止されても、引き続き、現役、OB議員を含め議員年金の支給が継続される内容を含む法律の名称が、単に「廃止する法律」というのでは、「名は体をあらわさず」、「一切の議員年金が廃止された」との誤解を生じさせる。国民を欺く名称と考えるが、内閣法制局の見解如何。この法律の内容からして本来あるべき名称案も付されたい。
二 、
小泉首相も昨年十二月七日、この法律案をみて「駄目だ。それでは廃止にならない」と、自民党幹部に見直しを指示したという。極めて真っ当な判断である。それがなぜ、翌日、与党幹部の説明で撤回してしまったのか。その理由は何か。公僕たる国会議員の年金制度は、国に関わる大事であると考えるので、内閣総理大臣の立場としての見解を問う。
三 、
この法律の背景には、既に受給資格を得た議員あるいは議員OBへの年金完全廃止は、憲法二十九条が保障する「財産権」を侵害するという考え方があると思われるが、これについての内閣の見解を問う。
四 、
サラリーマンが加入する「厚生年金基金」の場合、労使からなる代議員の多数によって解散を決めることができるが、その際、廃止した制度の年金受給権が「年金」として保護されるという法的構成にはなっていない。受給者は、基金の保有する資産の範囲内で清算一時金を受け取り、受給者がその一時金を年金にしたいと希望する時は、「企業年金連合会」に移管することができる。ただ、その額は、精算一時金をベースとして計算し直されるため、大幅減額となる。
サラリーマンには、こういう年金完全廃止の法律上の措置を講じながら、税金で多額の歳費や年金を受給してきた国会議員あるいは議員OBに、同様の措置が講じられない理由は何か。
五 、
それとも、国会議員あるいは議員OBの互助年金も、同様に解散し、「その清算一時金を基に、国民年金基金連合会に移管することができる」旨の法律の制定は、憲法二十九条の「財産権」を侵害することには当たらず、立法政策上の問題と考えて良いか。そうすれば、民間と同様に、国民年金の上乗せ給付できる途が開かれ、議員年金は、議員OBを含めて名実共に完全廃止となるが、政府はどう考えるのか。
六 、
与党内では、年金廃止対象となる議員の声に配慮して、新たに退職金制度の創設を求める動きが活発化しているという。退職金制度が導入されれば、その大部分は税金で賄われる可能性が高く、財政構造改革を進める政府としても看過できない事態と考えるが、政府の見解如何。
右質問する。
(参照条文)
[ 厚生年金保険法 ]
(解散)
第百四十五条 基金は、次に掲げる理由により解散する。
一 代議員の定数の四分の三以上の多数による代議員会の議決
二 三 (略)
(基金の解散による年金たる給付等の支給に関する義務等の消滅)
第百四十六条 基金は、解散したときは、当該基金の加入員であつた者に係る年金たる給付及び一時金たる給付の支給に関する義務を免れる。
(連合会)
第百四十九条 基金は、中途脱退者及び解散した基金が老齢年金給付の支給に関する義務を負つていた者(以下「解散基金加入員」という。)に係る老齢年金給付の支給を共同して行うとともに、第百六十五条から第百六十五条の三までに規定する年金給付等積立金の移換を円滑に行うため、企業年金連合会(以下「連合会」という。)を設立することができる。
[ 国民年金法 ]
(連合会)
第百三十七条の二 基金は、第百三十七条の十七第一項に規定する中途脱退者及び解散基金加入員に係る年金及び一時金の支給を共同して行うため、国民年金基金連合会(以下「連合会」という。)を設立することができる。)
Copyright(C) Kenji Eda All Rights Reserved.