大義なきイラク戦争の総括に関する質問主意書の答弁が届きました。(3/16)
2021年3月16日 国会活動 | 活動報告 | 答弁書 | 質問主意書 tag: 答弁書、質問主意書、イラク戦争、国連決議
大義なきイラク戦争の総括に関する質問に対する答弁書
令和3年3月16日 内閣総理大臣 菅義偉
今後の日本の外交や安全保障政策、そのあり方を考えるに当たっては、大義なきイラク戦争の、しっかりとした総括が必要不可欠である。よって、以下、質問する。
問1、国際法上、武力行使が許されるのは、「自衛権の行使(自衛戦争)」、または「国連決議による武力行使の承認」の場合に限られると理解してよいか。政府の見解如何。
(政府答弁)
国連憲章の下では、武力の行使は、自衛権の行使に当たる場合や国連安保理による所要の決定がある場合等国連憲章により認められる場合を除き禁止されているものである。
問2.イラク戦争の場合は、当時、イラクが米国にとって「急迫不正の侵害」をする脅威であったとは言えず(「自衛権の行使」ではなく)、また、イラクが米国における9.11テロに関与した証拠もなかった。「自衛権の行使」は、イラク戦争を正当化する理由にならないと考えるが、政府の見解如何。
問3、次に、「国連決議による武力行使の承認」があったか否かについては、米国、英国以外の国連常任理事国、更にはドイツもイラク戦争に明確に反対、当時のアナン国連事務総長も「新たな決議なしの攻撃は違法」と断じていた。したがって、イラク戦争は国連決議に基づくとは言えず、国連憲章違反、国際法違反ではないか。政府の見解如何。
問4、日本政府や当時の米国、英国政府は、苦肉の策として、湾岸戦争時のイラクとの停戦決議である国連安保理決議687(大量破壊兵器の破棄命令を含む)、その前提となる国連安保理決議678があれば足りるとしたが、その国連安保理決議678を国連安保理議長として採択したベーカー米国務長官(当時)ですら、のちに回顧録の中で、「国連決議が多国籍軍に認めていたのはクウェートの解放だけだから、それを尊重すべき」としている。
それでもなお、日本政府は、現時点においても、このイラク戦争には、それを正当化する国連決議があったとする立場か。
問5、今や世界では、当時、イラク戦争を遂行した米国や英国も含めて、イラク戦争は「間違った戦争だった」と総括されている。
英国では、7年間にわたり、イラク戦争への参戦と、その後の経緯を調べる独立調査委員会が設けられ、2016年7月6日、チルコット委員長は、2003年3月の時点ではフセイン大統領からの「切迫した脅威」はなく、国連安全保障理事会の大多数が支持していた封じ込め政策の継続は可能だったと指摘したうえで、政府が得ていた機密情報は武力行使の正当な根拠となるには不十分で、外交手段を尽くしてもいなかったという分厚い報告書を提出した。当時の首相、ブレア氏もイラク戦争の間違いを認め、国民に謝罪した。また、英国法務長官や外務省の法務部門も「新たな国連決議がない武力行使は違法と考えていた」と証言した。英国情報機関「MI6」の対テロ部門の責任者も、イラクが保有しているとされた生物化学兵器の実証ができなかったことも明らかにしている。
当時、国際原子力機関(IAEA)もイラクに核開発計画はないと認めており、国連監視検証査察委員会も、イラクが査察に協力していると報告していた。
また、米国では、2008年大統領選で、イラク戦争を「誤った戦争」と批判したオバマ氏が当選、本当の敵は9.11の首謀者であるウサマ・ビン・ラディンとして、大統領就任後、イラクからの早期撤退とアフガニスタンへの追加派兵を行った。バイデン大統領も、大統領選でイラク戦争を「大きな間違いだった」とし、2002年に上院議員として開戦に賛成したのは誤りだったと認めた。
オランダでも、独立調査委員会が2010年に「イラク戦争は国際法違反だった」と結論づける報告書を公表した。
それでも、日本政府は、イラク戦争を「間違いだった」と認めないのか。認めないなら、その理由を明確にされたい。
問8、日本政府も、英国、オランダのような独立調査委員会を設け、あらためて、イラク戦争の総括をしたらどうか。政府の見解如何。
(政府答弁)
イラクに対する武力行使は、国際の平和及び安全を回復するという目的のために武力行使を認める国連憲章第7章の下で採択された安保理の決議第678号、第687号及び第1441号を含む関連する安保理の決議により正当化されると考えている。イラクは、12年間にわたり、累次の安保理の決議に違反し続け、国際社会が与えた平和的解決の機会をいかそうとせず、最後まで国際社会の真摯な努力に応えようとしなかった。このような認識の下で、我が国は、安保理の決議に基づき米国、英国等の各国によりとられた行動を支持したものである。こうした当時の日本政府の判断は、今日振り返っても妥当性を失うものではなく、政府として改めて当該判断について検証を行う考えはない。
問6、私の理解では、外務省が2012年12月に、「対イラク武力行使に関する我が国の対応(検証結果)」を発表したが、そこでは、イラクの大量破壊兵器に関する外務省の情報不足を反省しつつも、日本政府が米英等の武力行使を支持したことの是非自体について検証するものではないとしている。
この他に、日本政府は、これまで、イラク戦争の総括(検証)について、どのような公式文書(政府見解)を公表しているのか。
(政府答弁)
お尋ねの「イラク戦争の総括(検証)」に関する「公式文書」については、御指摘の検証結果以外に該当するものはない。
問7、私も、あのサダム・フセインを擁護する気は全くないが、戦争は双方に、特に罪のない民衆に悲惨な結末をもたらす。本来、ぎりぎりの外交的手段を尽くし、最終最後の手段として行使されるべきものである。そして、その場合も、当然、国際社会のルールに則って行われる必要がある。
正当性なき武力行使は、冷戦後の世界秩序の崩壊につながり、その結果、民族や宗教等に起因する地域紛争やテロ行為の多発を助長し、ひいては我が国の安全に脅威を及ぼすと考える。現に、イラク戦争とフセイン政権の崩壊により、イラクは混乱に陥り、宗派対立が激化して国際テロ組織アルカイダが勢力を増し、後に過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」が台頭した。
この点、英国のブレア元首相も、米メディアのインタビュー(2015年10月25日)で、イラク戦争が過激派組織「イスラム国」の台頭につながったと認めた。政府も同じ認識か。
(政府答弁)
御指摘の「「イスラム国」の台頭」については、様々な要因が考えられることから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難である。
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