普天間飛行場の返還及びその辺野古移設に関する質問主意書の答弁が届きました。(3/5)
2021年3月 5日 国会活動 | 活動報告 | 質問主意書 tag: 質問主意書、普天間、普天間飛行場、辺野古、辺野古移設、沖縄予算、答弁
衆議院議員江田憲司君提出
普天間飛行場の返還及びその辺野古移設に関する質問に対する答弁書
令和3年3月5日 内閣総理大臣 菅義偉
問1.菅首相は今、首相と沖縄県、沖縄県民との間に信頼関係があると思うか。
問2.菅首相は、梶山静六氏を「政治の師」と仰いでいると聞くが、梶山氏にも政治家として、沖縄に強い思いがあった。
それに比し、菅首相の沖縄への向き合い方を見ていると、とても梶山氏を師と仰いでいるようには見えず、誠意というものが感じられない。先の施政方針演説でも、首相は「沖縄の皆さんの心に寄り添い」と述べたが、本当に首相は、沖縄に寄り添っていると考えているのか。
問3.梶山氏は、その著書で「日米安保の効果的運用のためには、沖縄県民の理解と協力が不可欠であり、県民不在の日米安保はありえない」「民主主義国家において特定の地域、特定の県民だけが国益のために負担を過度に負うことは、民主主義の原理に違背し、やがてはその根本をも覆すことになりかねない」と述べている。菅首相は、この考えに同意するか。
(政府答弁)
戦後75年以上を経て、なお在日米軍の施設及び区域が沖縄県内に集中している現状は沖縄の大きな負担となっているものであり、このような現状は是認できるものではなく、その負担の軽減を図ることは政府の大きな責任である。
引き続き、沖縄県民の皆様の理解と協力を得ながら、また、沖縄県民の皆様の気持ちに寄り添いつつ、政府としてできることは全て行うとの姿勢で沖縄の負担軽減に全力で取り組んでいく考えである。
問4.故翁長前沖縄県知事は、当時の菅官房長官のことを、沖縄占領時に「沖縄の自治は神話に過ぎない」と発言した「キャラウェイ高等弁務官」に例え、菅官房長官とはじめて会談した場所を、その弁務官事務所跡のホテルにしたという。この事実を菅首相は知っていたか。
(政府答弁)
平成27年4月5日、翁長雄志沖縄県知事(当時)と菅内閣官房長官(当時)とが、沖縄ハーバービューホテルにおいて会談を行ったところであるが、お尋ねのような事実は承知していない。
問5.菅首相(官房長官)は、口では「沖縄に寄り添う」と言いながら、その実は、露骨な「アメとムチ」を駆使し、沖縄を壟断、分断してきたと報道されている。
例えば、沖縄振興予算の額を2014年度3501億円から2018年度以降3010億円に減額、うち自由度の高い一括交付金も、2014年度1759億円から2020年度1014億円に減額している。
その一方で、2015年度から2017年度には、辺野古周辺の3行政区に対し、数千万円の補助金を辺野古移設反対派の名護市長を飛び越えて直接交付し、2018年の市長選で移設賛成派が勝つと、その交付を停止すると同時に、米軍再編交付金を再開した。更に、2019年度には、県の頭越しに国が市町村に直接交付する「沖縄振興特定事業推進費(2021年度予算85億円)」を創設している。
これら一連の政府の対応について、先にふれたように「露骨な「アメとムチ」で沖縄を壟断、分断してきた」と批判されているが、菅首相の見解如何。
(政府答弁)
御指摘の沖縄振興交付金及び沖縄振興特定事業推進費を含む沖縄振興予算については、沖縄振興特別措置法の趣旨も踏まえ、沖縄振興を推進するために必要な額を計上したものであり、また、御指摘の再編関連特別地域支援事業補助金及び再編交付金についても、それぞれの制度の趣旨を踏まえ、適切に交付したものである。このため、御指摘のような批判は当たらないと考えている。
問6.菅首相は、「外交に疎い」と批判されて、「すべて官房長官としてフォローしてきたから大丈夫」と反論している。ならば聞くが、安倍・菅政権で、米国に対し、一度でも「辺野古移設」をめぐる沖縄の思い、移設への反対状況について、米国大統領に説明したことがあるか。移設先見直しの可能性について問題提起したことがあるか。
問7.菅首相はよく、普天間飛行場の「返還合意が原点」「辺野古が唯一の解決策」と言い募るが、その当事者の一人であった私の立場から申し上げると、確かにあの当時は、沖縄県内への移設しか選択肢がなかったのは事実である。しかし、それはあくまでも1996年当時のことである。
その後、10年が経過し、むしろ米国の意向により、在沖縄海兵隊を約8000(後に約9000人)削減し、グアム島等の沖縄県外に移すということになった(2006年5月/「再編実施のための日米のロードマップ」)。1996年当時も、「海兵隊の削減」が沖縄のもう一つの大きな要望だったが、さすがの橋本首相も米国に言い出せなかった。
さらに、最近では、北朝鮮のミサイル能力の向上に伴い、米軍内に、海兵隊を沖縄のような前線に常置しておいて良いのか、抑止力や反撃能力のことを考えれば、むしろ、もっと後方(例えばグアム)に配備した方が戦略的に正しいのではないかとの声も挙がり始めたと聞く。
ことほど左様に、時の流れに応じて、東アジアを巡る安全保障環境の変化や在沖縄海兵隊の戦略的位置付け等も変わりうる。一度、沖縄の苦悩を含む、辺野古移設の状況を説明し、その見直しを米国に提起したらどうか。首相が「原点」と位置づける「返還合意」も、「こんな戦略的要衝の地を米国が返すはずがない」と反対する外交当局を押し切って、クリントン大統領との初の首脳会談で橋本首相が提起したからこそ成ったのである。
(政府答弁)
日米間のやり取りの詳細について明らかにすることは、米国との関係もあり、差し控えたいが、同国に対し、沖縄の負担軽減に関する我が国の立場や取組について説明する中で、沖縄県民の皆様の思いをしっかり伝えてきている。
また、普天間飛行場の移設については、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを、累次にわたり日米間で確認している。
問8.また、既に知られているように、普天間飛行場の代替機能は、沖縄県内に必ずしも置かなければならないものでもない。安全保障や軍事戦略上、海兵隊の即応能力や機動性等を確保するためには、県外移設でも十分にそれが担保されうる場合がある。
海兵隊の運用は、「教育・訓練」「演習や実任務」「次に備えた部隊再編成・教育」というフェーズに分かれ、実際、在沖縄海兵隊も、これらに合わせ、普天間飛行場だけでなく、アメリカ本土、太平洋の各地をローテーションして動いており、半年以上も沖縄を留守にしているともいわれる。
以上のように、一般論で言えば、必ずしも県内に代替機能を置かなくても、海兵隊の抑止力は維持できると考えて良いか。
(政府答弁)
沖縄は、米国本土、ハワイ等と比較して、東アジアの各地域に近い位置にあると同時に、我が国の周辺諸国との間に一定の距離をおいているという利点を有している。また、南西諸島のほぼ中央にあり、我が国のシーレーンに近いなど、安全保障上極めて重要な位置にある。こうした地理上の利点を有する沖縄に、優れた機動性及び即応性により、幅広い任務に対応可能な米国海兵隊が駐留することは、日米同盟の抑止力を構成する重要な要素であり、我が国の平和と安全を確保する上で必要なものであると考えている。
政府としては、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、米軍の抑止力を維持しながら、同時に普天間飛行場の危険性を一刻も早く除去するためには、同飛行場の辺野古への移設を着実に進めることが必要であると考えている。
問9.日米安全保障協議委員会(日米「2プラス2」)共同発表(2012年4月及び2013年10月)によれば、海兵隊の沖縄からグアムへの移転(約4000名)は、2020年代の前半に開始とされている。
①現在の進捗状況如何。
②その移転に、当初予定されていた「司令部」は含まれるのか。含まれないなら、その変更理由如何。
③約九千人の沖縄県外への移転が完了した後に、沖縄に残留する海兵隊は何名か。
(政府答弁)
問9の①について
第三海兵機動展開部隊の要因及びその家族の沖縄からグアムへの移転については、平成25年10月3日付けの日米安全保障協議委員会共同発表において、2020年代前半に開始されることを確認しており、日米両政府は、引き続き緊密に協力しながら、当該移転に向けた施設整備等の取組を確実に進めているところである。
問9の②について
平成18年5月1日の日米安全保障協議委員会の際に発表された「再編の実施のための日米ロードマップ」においては、「移転する舞台は、第3海兵機動展開部隊の指揮部隊、第3海兵師団司令部、第3海兵後方群(職務支援群から改称)司令部、第1海兵航空団司令部及び第12海兵連隊司令部を含む」こととされていたところ、その後、必要な調整がなされた結果、平成24年4月27日の日米安全保障協議委員会共同発表においては、「沖縄に残留する米海兵隊の兵力は、第3海兵機動展開部隊司令部、第1海兵航空団司令部、第3海兵後方支援群司令部、第31海兵機動展開隊及び海兵隊太平洋基地の基地維持要員の他、必要な航空、陸上及び支援部隊から構成されることとなる」とされた。
さらに、政府としては、平成25年10月、沖縄からグアムへ移転する在沖縄米海兵隊の主な部隊は、「第3海兵機動展開旅団司令部、第4海兵連隊、第4戦闘後方支援部隊等」である旨を公表したところであるが、移転する部隊の詳細な計画については現時点で決定されていない。
問9の③について
在沖縄米海兵隊の定員は平成24年4月時点で約19,000人であったと承知しているところ、これを前提とすれば、政府としては、このうちの約9000人が日本国外に移転することにより、移転後の定員は約10,000人になるものと認識している。
問10.辺野古移設は、軟弱地盤の発見で、総工費は従来の2.7倍の約9300億円に跳ね上がり、工期も延びて、「2022年以降」とされていた移設時期も「早くても2030年代半ば」にずれ込む見通しとなっている。一時、米国とのSACO(沖縄における施設及び区域に関する特別行動委員会)最終報告(1996年12月)に盛り込まれた「海上施設案(将来的な基地の撤去可能性についても言及)」を、再度、検討する余地はないか。
(政府答弁)
政府としては、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に代替施設を建設する現在の計画が、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であると考えており、同飛行場の1日も早い移設・返還の実現に向け、引き続き、普天間飛行場代替施設建設事業を適切に進めていく考えである。
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