北方領土返還を巡る日露交渉に関する質問主意書の答弁が届きました。(3/2)
2021年3月 2日 国会活動 | 活動報告 | 質問主意書 tag: 質問主意書、答弁書、北方領土
北方領土返還を巡る日露交渉に関する質問に対する答弁書
令和3年3月2日 内閣総理大臣 菅義偉
問1. 報道によれば、ロシアのプーチン大統領は今月、日本との北方領土交渉について「憲法に違反する行為は一切しない」と述べ、昨年七月に発効した改正憲法に盛り込まれた「領土割譲の禁止」条項を念頭に、日本の領土返還要求に応じない立場を表明したという。これが事実とすれば、今後のロシアとの交渉に重大な支障となると考えるが、政府の認識如何。
(政府答弁)
プーチン大統領の発言については承知しているが、ロシア連邦の憲法改正後の令和2年9月29日に菅内閣総理大臣とプーチン大統領との間で行われた日露首脳電話会談の際に、プーチン大統領は、平和条約交渉を継続していく意向を表明している。
問2. そのロシア改正憲法には、「国境の再画定」を「領土割譲の禁止」の例外とする規定もあるというが、政府はどう解しているか。この例外規定について、ロシア外交当局と意見を取り交わしたことはあるか。あるのであれば、この規定についてのロシア側の見解如何。
(政府答弁)
お尋ねは、外国憲法の解釈に関するものであり、政府として、有意的に解釈し得る立場にはないため、お答えすることは差し控えたい。ロシア連邦政府との間では平素から様々なやり取りを行ってきているが、外交上の個別のやり取りについては相手国との関係もあり、お答えすることは差し控えたい。
問3. 安倍前政権は、日露交渉における「新しいアプロ―チ」を提起したが、菅政権もそれを踏襲するのか。その場合、「新しいアプロ―チ」とは何を意味するのか。「共同経済活動」のことか。
問4. 「共同経済活動」自体は、何も目新しいものではなく、小渕政権時の「モスクワ宣言」(1998年11月)で「共同経済活動委員会は、国境線確定委員会と並行して活動し、どのような共同経済活動ができるか検討する」旨が盛り込まれたが、結果、潰えたものである。その最大の要因は、「日露双方の法的立場を損なわない」ことが確保できなかったことにある。にもかかわらず、菅政権がこのアプローチを継承しているのなら、なぜ、小渕政権時にはできなかったことが、今後、できるようになるのか、説明されたい。
(政府答弁)
「新しいアプローチ」とは、北方領土問題に関し、北方四島の未来像を描き、その中から解決策を探し出すという未来志向の発想に基づくものであるが、「モスクワ宣言」における「共同経済活動」との比較において、その詳細を明らかにすることは、ロシア連邦との今後の交渉に支障を来すおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。いずれにせよ、平成28年12月15日及び16日日露首脳会談で両首脳が協議を開始することで一致した北方四島における共同経済活動は、この「新しいアプローチ」の一環であり、菅内閣においてもロシア連邦政府との間で協議を継続している。
問5. 安倍前政権以降、政府は日ソ共同宣言(1956年)を基礎とするという方針を繰り返しているが、その意味するものは何か。あえて「東京宣言」(1993年)にも「イルクーツク声明」(2001年)にも触れていない理由如何。これは「二島のみ返還」を意味するのではないか。あるいは、「二島先行返還」を意味するものか。
問6. ウラジオストクで開催された「東方経済フォーラム」(2018年9月)で、プーチン大統領は「前提条件をつけずに平和条約を締結した後、すべての問題の議論を続ける」とし、領土交渉を後回しにする考えを示唆した。これで追いつめられた安倍前首相が、その後、シンガポールで開催された首脳会談(2018年11月)で「二島のみ返還」に舵を切ったのではないか。
問12. あくまで「四島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」という、歴代政権の方針に変更はないか。はっきりと答えられたい。
(政府答弁)
北方領土は我が国が主権を有する島々であり、政府としては、ロシア連邦との間で北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、平和条約交渉に粘り強く取り組んでいくとの考えに変更はない。
問7. そのシンガポール合意以降、安倍前首相がこの問題で頼った鈴木宗男氏のブレーンである東郷元オランダ大使、佐藤元外務省主任分析官が、口裏を合わせたかのように「二島返還+α」論(歯舞群島、色丹島は返還するが、国後島、択捉島の主権はロシアに認め、この二島とは経済的人的交流等を自由にするという案)をメディアに発信していたことがあったが、これは、当時の官邸との連携プレーではなかったのか。
(政府答弁)
「当時の官邸との連係プレー」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
問8. そもそも、この日露交渉が暗礁に乗りあげた発端が、安倍前首相の故郷、長門市での日露首脳会談(2016年12月)である。この時、「共同声明」どころか、最も格下の「プレス向け声明」しか発出できず、しかも、そこに「領土」の二文字すらなかった。なぜ、わざわざ、ロシアの大統領が久々に訪日し、安倍前首相の故郷で会談したにもかかわらず、この程度の対外発表しかできなかったのか。この事実自体が、領土問題でロシア側が譲歩しないという意思を表明した証左ではないか。
(政府答弁)
平成28年12月15日及び16日の日露首脳会談の際に、両首脳は、平和条約問題を解決するとの両首脳自身の真摯な決意を表明した。同会談後に発表されたプレス向け声明において、「両首脳は、・・・平和条約問題を解決する自らの真摯な決意を表明した」旨が確認されている。
問9. クリミアを併合したロシア、力による領土拡大を図ったロシアに、「法と正義」が通じると政府は考えているのか。
(政府答弁)
「「法と正義」が通じる」の意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。
問10. このクリミア併合に対し、政府は「ウクライナの統一性、主権や領土の一体性を侵害するものであり、非難する」と表明したが、その制裁は、査証(ビザ)発給要件緩和に関する協議停止や両国間の新投資協定など三点の締結交渉開始凍結にとどめている。ロシアが北方領土を、先の大戦の結果、ロシアの領土になったと認めろと言い続け、領土交渉に誠意を見せないなら、「お百度を踏む朝貢外交」ではなく、先進七カ国(G7)を含む各国と歩調を合わせ、より厳しい措置を検討すべきではないか。
(政府答弁)
政府としては、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重しており、ロシア連邦によるクリミア「併合」は認めないとの立場の下、G7の連帯を重視しつつ、御指摘の査証等に関する措置を含め、対露措置を継続している。
また、令和2年9月29日に菅内閣総理大臣とプーチン大統領との間で行われた日露首脳電話会談の際に、プーチン大統領は、平和条約交渉を継続していく意向を表明しており、政府としては、ロシア連邦との間で北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するとの基本方針の下、平和条約交渉に粘り強く取り組んでいく考えである。
問11. 今年2月7日の「北方領土の日」に行われた「北方領土返還要求全国大会」が採択した大会アピールでは、返還を求める北方四島について、「法的根拠のないままに75年間占拠され続けていることは誠に遺憾」と明記されている。政府も同じ認識か。
(政府答弁)
北方領土は我が国が主権を有する島々である。
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