カジノ(IR)の日本誘致に関する質問主意書の答弁が届きました。(2/19)
2021年2月19日 国会活動 | 活動報告 | 質問主意書 tag: 質問主意書、IR、カジノ、答弁書
衆議院議員江田憲司君提出 カジノ(IR)の日本誘致に関する質問に対する答弁書
令和3年2月19日 内閣総理大臣 菅義偉
問1
私は、「観光立国」には賛成だが、欧米でも東アジアでも、既にカジノ事業は過当競争で飽和状態である。今更、日本に誘致しても、どこの国の人が「カジノ目当て」「カジノ目的」で訪日するのか。考えられるのは中国の富裕層だが、中国人でカジノをやりたいなら、中国語が通じるマカオか、近場の韓国に行くと考える。わざわざ高い旅費等を払って日本には来ない。政府の見解を問う。
(政府答弁)
我が国におけるIRの整備は、カジノ施設のみならず、国際会議場施設、展示施設、レクリエーション施設等が一体的に運営される統合型リゾートを整備するものであり、世界中から観光客を集めることにより、観光先進国の実現を後押しするものと考えている。
問2
2020年8月、中国は、海外のカジノが自国民の財産や安全を脅かしているとして、カジノがある外国都市への渡航を制限するブラックリスト制度の創設を公表した。念頭には、海外のカジノが汚職や腐敗といった犯罪の温床になっているとの懸念があるとも言われる。この制度について政府として把握していれば答えられたい。
また、これにより、来訪者の大半を中国人富裕層に依存する東アジアのIR(カジノ)経営は、コロナ禍による影響に加え、大きな打撃を受ける可能性がある。過去に中国政府は、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システムの配備を理由に韓国への渡航制限をした例もあり、この制度を政治利用するおそれもある。この制度により、ますます、日本にカジノ(IR)を設けても、外国人、特に中国人観光客の来場は期待できないのではないか。政府の見解を問う。
(政府答弁)
中華人民共和国が令和2年8月に御指摘のような制度の創設を公表したことは承知しているが、当該制度の具体的な内容については公表されておらず、後段のお尋ねについてはお答えを差し控えたい。
問3
世界的に有名なラスベガスでも、昨今はカジノから他のエンターテインメントに比重が移っていると聞く。直近5年間で、ラスベガスへの観光客のうち、外国からの観光客の占める割合について政府として把握していれば答えられたい。
(政府答弁)
「Las Vegas Convention and Visitors Authority」によると、直近5年間の割合は、15年が約14%、16年が約13%、17年が約14%、18年が約14%、19年が約13%であると承知している。
問4
観光庁の調査では、訪日理由の上位は「日本食」や「温泉」「古民家等の街並み」などが占めている。コロナ禍以前に、日本へのインバウンド、外国人観光客が増えていたのは、日本の伝統・文化、自然等、他の国にない、その魅力に惹かれてのことではないか。政府の見解を問う。
(政府答弁)
観光庁の「訪日外国人の出費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析 21年1-3月期(速報)報告書」によると、訪日外国人が「訪日前に最も期待していたことを単一回答で尋ねたところ、「日本食を食べること」(28.0%)、「自然・景勝地観光」」(12.2%)、「ショッピング」(10.2%)、「スキー・スノーボード」(9.8%)の順と承知している。
問5
政府は、IR(カジノ)は「成長戦略の目玉」(安倍晋三前首相)と言うが、IR(カジノ)には「カニバリゼーション(共食い)現象」があるとされる。大規模小売店舗の進出により、過去、地元商店街が「シャッター通り」化したように、まるで「蟻地獄」のように地元、周辺地域の消費を吸い上げる。米国ニューハンプシャー州は、カジノ開業で周辺地域から40%~60%の「消費の吸上げ」が発生するとの理由でカジノ導入を断念した。政府は、こうした負の経済効果を試算しているか。また、IRを申請する自治体に、その認可に当たり、その試算を求めるか。
問6
カジノには、ギャンブル依存症の飛躍的増大、反社会的勢力と結びついた治安や風紀の乱れ、青少年の教育への悪影響等々の弊害が指摘される。政府は、こうした負の社会的コストを試算しているか。
韓国では、カジノ導入により7.7兆円の損失が生じたとの試算があるし、米国ニューハンプシャー州の報告書では、その社会的コストは「病的ギャンブラー」一人当たり5,144ドルという推計がされている。
およそ、プロジェクト実施の可否の判断に当たっては、費用便益分析等を行うのは当然のことである。カジノ誘致に動いている政府や関係自治体は、こうしたカジノの負のコストを含めたIRの総合評価をすべきではないか。政府の見解を問う。
(政府答弁)
都道府県等が、民間事業者と共同して区域整備計画を作成し、認定申請を行う際には、区域整備計画に、その実施により見込まれる経済的社会的効果に関する事項、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除を適切に行うために必要な施策及び措置に関する事項(その実施に要する費用の見込みを含む。)等を記載させることとしている。
また、国土交通大臣は、法に基づき、国際競争力の高い魅力ある滞在型観光の実現への寄与、経済的社会的効果、カジノ施設の設置及び運営に伴う有害な影響の排除等の観点で優れた区域整備計画を認定することとしている。
いずれにせよ、IRの整備は、国際会議等の開催を増加させ、それによる観光その他の交流の機会を充実させるとともに、我が国の魅力を発信することにより国内外からの観光旅客の来訪を増加させ、国内における各地域への観光旅行を促進することを目指すものであり、「カニバリゼーション(共食い)現象」がある」との御指摘は当たらない。
問7
政府は「世界最高水準のカジノ規制」(安倍晋三前首相)と胸を張るが、法規制では、週3回(月10回)まで入場可となっている。週3回もカジノ通いする人は、既にギャンブル依存症と言っても過言ではない。韓国では「内国人利用可のカジノ」は「公営」に限り、手軽にカジノを利用できる周辺の地域住民は月1回しか入場を認めていない。また、「大都市(百万都市)」から車で2.5時間以上という設置基準も設け、日本より厳しい規制をしている。これらに比し、日本のカジノ規制のどこが「世界最高水準」なのか。政府の見解を問う。
(政府答弁)
カジノ行為への依存防止に関し、入場回数の制限、入場料の賦課及びカジノ事業者による貸付けの制限を行うとともに、すべての入場者を対象として、入場者又はその家族等の申出によるカジノ施設の利用を制限する措置、カジノ施設を利用させることが不適切であると認められる者のカジノ施設の利用を制限する措置等を講ずることをカジノ事業者に義務付けるほか、カジノ施設の数の限定、面積の制限、広告及び勧誘の規制を行う等の重層的・多段階的な取組を制度化し、万全を期したものである。
問8
「IR中核施設の設置要件」をみると、大阪市や横浜市といった大都市にしか誘致できない基準となっているのではないか。
例えば、国際会議場の収容人数に応じて展示場の面積が決められているが、会議場6000人以上の場合は、展示場面積が2万平方メートル以上必要となる。会議場は国内最大である東京国際フォーラムやパシフィコ横浜でも収容人数は約5000人、また、2万平方メートル以上の展示場となると、東京ビッグサイトや幕張メッセなど全国で6カ所程度にすぎない。しかも、その両方の要件を満たす必要がある。
さらに、ホテルの客室総床面積は10万平方メートル以上とあるが、単純計算で50平方メートルの部屋が2000室必要となる。帝国ホテル東京でも3万9000平方メートル、ホテルニューオータニ東京でも4万4000平方メートル、客室数も平均約1500室にとどまる。
以上の基準に照らせば、獣医学部新設で加計学園しか通れない「穴」をあけたように、カジノについては横浜市と大阪市しか通れない「穴」をあけようとしているのではないか。政府の見解を問う。
(政府答弁)
「特定複合観光施設については、国際的・全国的な視点から、「真に観光及び地域経済の振興の効果を十分に発揮できる規模のものと」するとされていること等を踏まえ、特定複合観光施設区域整備推進会議における議論を経て定められたものであり、特定の都道府県等を対象とすることを念頭に置いたものではない。
問9
赤羽国務大臣は、「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」に対する衆議院本会議(2016年12月15日)での自身の賛否について、衆議院内閣委員会(2019年11月29日)において、「社会的政策の側面の懸念と経済的政策のメリットの、なかなかはかりがたいものがあったので、私は、本会議、賛否は保留して、棄権をしました。」と答弁している。赤羽大臣はIR担当大臣として、その当時の考えと変わりないか。変わったとすればその理由は何か。
(政府答弁)
お尋ねは、赤羽国務大臣の当時の国会議員としての見解に関するものであり、政府としてお答えする立場にない。
問10
赤羽一嘉国務大臣は、私との衆議院内閣委員会での質疑(2019年11月29日)において、「私、別に(カジノ)推進派という立場でこの役職についているわけではございません。基本的には中立な立場」「江田先生と、多分私、考えはよく似ていると思う 」と答弁したが、
①その答弁の趣旨如何。
②IR設置の便益よりも費用の方が大きい場合は認可しないということでよいか。
③菅義偉首相も赤羽大臣答弁と同じ考えか。
(政府答弁)
お尋ねは、赤羽国務大臣個人の見解に関するものであると考えられることから、政府としてお答えすることは差し控えたい。
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