衆院予算委員会で30日、2016年度第2次補正予算に関する基本的質疑が行われ、民進党の2番手として質問に立ち、(1)金融政策(2)規制改革等成長戦略(3)財政政策(4)人と暮らしへの投資――などに関して安倍総理、黒田日銀総裁らの認識をただしました。
アベノミクスに関して「いろんな統計数字もあるが、多くの国民は景気回復を実感していない。こういった問題に真摯(しんし)に取り組むのが与党と野党第1党の責務。私自身は一定の評価はしているがもはや限界を露呈している」との見方を示し、象徴的な事例の一つが補正予算に見られると指摘。安倍政権になって補正予算で初めて2.7兆円規模の建設国債を発行したことについて、「これまではアベノミクスの果実である税収増で補正予算をまかなってきたと胸を張っていたが、大きな転換点だ。結局、1年間の国債発行も37兆円を超え、安倍政権で初めて、前年度を超える国債、借金をしてしまった」と、アベノミクスの限界を表すものだと指摘した。これに対して安倍総理は「今回、28兆円の経済対策は、世界経済がリスクに直面していることに備えなくてはならないというので組んだ。未来への投資ということで建設国債を発行した」などと答弁した。
アベノミクス3本の矢について、(1)第1の矢の「金融緩和」はカンフル剤で、一時的に株が上がり円も安くなったのは認めるが、カンフル剤であるから打ちすぎれば副作用があると当初から指摘してきた。今や「飛んだが矢折れ刀尽き限界」となっている(2)第2の矢の「財政出動」はあらぬ方向に飛んでいて、公共事業のばらまき、無駄な補助金、基金の無駄遣いをして、人への投資、生活改善への投資、技術革新等に向けられていない(3)第3の矢の「成長戦略」は規制改革、新陳代謝、イノベーションなどで現在の日本にとって重要なものだが、この矢は飛んでいない――と分析した。
第1の矢の金融緩和が行われた際に日銀総裁は2年後には2%の物価安定を達成すると目標を掲げたが、3年半が経過して物価が上昇するどころか消費者物価指数がマイナス0.5%となっている点に注目し、「完全に金融政策は行き詰まった」と指摘した。これに対して安倍総理は、「残念ながら脱却という状況にはなっていないが、デフレではないという状況をつくり出すことはできた」と強弁。日銀が新たに導入した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」について、2%の物価安定目標を「早期に実現するものと理解している」などと開き直り、具体的な手法は「日銀に委ねるべき」で、黒田日銀総裁を「信頼している」などと応えた。
江田は量的・質的金融緩和の現状について、「建て増しを続けた温泉旅館のよう」にリスクを伴うとし、従来日銀は「長期金利は操作できないと言っていたはずだ」と指摘した。これに対して黒田総裁は、「リーマンショック後、主要国の中央銀行では長期金利に働きかけることを明確な政策目標として示しながら長期国債の大量買入れを実施している。日本銀行としても過去3年半の金融緩和と半年強のマイナス金利の経験をふまえ、大規模な国債買い入れとマイナス金利を組み合わせることによって長期金利にかなりの程度影響を与えることができると分かった。従ってこの二つの組み合わせを使い、さらにそれに加えて日本銀行が指定する利回りによる国債の買い入れといった調整も加え、量的・質的金融緩和を行う」と説明した。
これを受けて江田は「要は市場の従来の機能が十全に発揮されている時には中央銀行たりとも操作できなかったが、今は新発国債の9割を日銀が買い、350兆円を超えて残高の4割を日銀が保有し、来年は500兆円に及ぶというまさに完全な官製市場になっているから長期金利操作ができると白状しているようなものだ」と、その行き詰まりを指摘した。
江田はまた、(1)公共事業関係費の繰越(2)基金の返納の実態を述べ、「ムダな部分だ」と指摘。また、年収1億円以上の人の所得税負担率が低くなっていくことや、法人税の負担率が大企業ほど低くなるなどの事例を上げ、是正してその分を「人と暮らしへの投資に向けるべきだ」と提言した。
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