「現執行部の正統性と臨時党大会の不成立についての法律意見書」(郷原・清水弁護士/10月21日公表)
2015年10月21日 活動報告 tag:
法律意見書の概要(弁護士:郷原信郎・清水真/10月21日公表)
(現執行部は正統)
1.松野代表の選任及び任期延長は,党規約等に従って適正になされており,執行役員会等の構成も適正である。よって,松野代表は平成27年10月1日以降においてもその地位を有しており,現執行部は正統なもの。
(理由)
党規約は,任期満了によらない代表選挙については,党員による選挙以外の方法を可能とした上で,その具体的な方法は執行役員会の合理的な裁量に委ねている。代表選挙規則においても,任期途中の代表選挙においては「執行役員会において臨時緊急であると認める時」に党大会以外での代表選出を認めている。
党規約は,代表の任期満了に伴う代表選挙は,「代表の任期が終了する年の9月に行うことを通例とする。」と定めており,その時期を9月に限定しておらず,9月以前に行うものともしていない。維新の党は政党であるから,解散総選挙・会期延長などを含め,政治情勢の変動等により代表選挙の実施が事実上極めて困難となる事態は想定できるものである。また,その際には,原則よりも前倒しで選挙が実施できるとは限らないから,党規約は,任期満了による代表選挙が代表の任期満了後に行われることも想定していると考えられる。
したがって,安全保障関連法案の審議のための国会会期の95日の延長という事態を受けて,選挙の延期が「政治情勢等に係りとくに必要がある」として,新たな選挙制度によって代表選挙を行う上で必要な期間においてこれを延長するとした執行役員会の判断も合理的なものであるといえる。
そして,前任者の任期満了によって役職者が欠けた場合に,新たに選任された者が就任するまでの間,任期の満了により退任した者が引き続きその職務を行うとの定めは,一般的に合理的なものと考えられている(会社法351条1項,一般社団法人及び一般財団法人に関する法律75条1項参照)。少なくとも,新代表が決定されるまでの間,松野代表の任期を延期することとした執行役員会の決定は,内容的にも合理的なものであって、有効なものということができる。
(「臨時党大会」は不成立)
2.東徹議員には党大会の招集権も事務を取り扱う権限もないので,党大会を開催することはできない。そこで何らかの内容が決定されても,その効果は維新の党には及ばない。
(理由)
党規約は「党大会は,執行役員会の承認に基づき,代表が招集する」と定めている。東議員は,代表ではなく,かつ、執行役員会の承認も得ていないから,党大会の招集権を有さず,招集状を発送することもできない。特別党員の過半数の賛同を受けたことによって党大会を開催することなどできないのは当然の事理である。
松野代表の後任の代表選は,任期満了に伴う代表の選出をすべき場合に該当する。したがって,一般党員が選挙権を有しない党大会によって,新代表を選出することは規約上できない。したがって,この点からしても,臨時党大会による新代表の選出は不適法である。
松野代表の選任による執行役員会の構成員への就任を受諾し,任期満了による代表選挙の延期や松野代表の任期の延長を提案して賛成していた者、9月末の任期延長後に行われた執行役員会に出席していた者が,松野代表の選出や任期延長を無効であると主張した上で,代表選出のための「臨時党大会」の開催を通知する文書を送付するなどの行為を行うことは,従前の自己の言動に基づいて形成された事実状態を,自己の都合により,一方的に覆し,徒に混乱させるものであって、禁反言の原則や信義誠実の原則などの法理に照らし法的に許容されないというべきである。
(犯罪行為を形成)
3.無効な臨時党大会の決定に基づき、役所へ各種届出を行えば、偽計業務妨害罪、公正証書原本等不実記載罪等に該当する。また、支出権限者に無断で政党交付金を費消した場合、党本部事務局の担当者は業務上横領罪に該当する。
(理由)
・総務省(選管)への党の代表変更届、党の解散届
人を欺いたり不知を利用したりして維新の党の業務を妨害することとなるので,偽計業務妨害罪に該当する(法定刑:3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。
・法務省(法務局)への党の代表変更登記
松野代表が記名押印していないにもかかわらず,松野代表名義の「代表権を有していた者の記名押印した書面」を作成して提出した場合には,有印私文書偽造(刑法159条1項),同行使(刑法161条1項)に該当する(法定刑:いずれも3月以上5年以下の懲役)。同時に,公正証書原本等不実記載未遂罪(刑法157条3項)に該当し,それによって不実の登記を行わせた場合には,公正証書原本等不実記載罪(刑法157条1項)に該当する(法定刑:いずれも5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。
松野代表は代表者ではなくなっており代表不在の状況にあり,臨時党大会で新たに代表が選任されたなどとして,後者の新代表名義の書面のみで変更登記を行おうとした場合,「臨時党大会」は党大会ではないので,それによって選任されたとする「新代表」への変更登記申請を行えば,虚偽の申立てをしたことになり,公正証書原本等不実記載未遂罪(刑法157条3項)に該当し,それによって不実の登記を行わせた場合には,公正証書原本等不実記載罪(刑法157条1項)に該当する(法定刑:いずれも5年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。
・政党交付金の費消
党本部事務局の担当者は,維新の党の政党交付金を業務上委託されて占有しているものであるから,それを支出権限者に無断で費消するなど,自己又は第三者のために不法に領得する行為は,業務上横領罪に該当する(法定刑:10年以下の懲役)。
維新の党(HP 2015.10.21)
現執行部の正統性と「臨時党大会」の不成立について
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